お客様インタビューVol. 9 株式会社宇野澤組鐵工所様

1983年、世界で初めて油や水を必要とせず、環境汚染の全くないドライタイプの高真空ポンプ「ウノサワ・トライパック真空ポンプ」を開発した風水力機械の専業メーカー、宇野澤組鐵工所様。「ウノサワ」のポンプは、その品質の高さと信頼性から、世界中の工場や研究施設、石油プラントなどに欠かせない存在です。
同社の創業は、1899年(明治32年)にまでさかのぼります。創業者の宇野澤辰雄氏は、明治政府の命を受けドイツでガラス技術を学び、日本で初めてステンドグラスを制作した人物。生粋の技術者であった同氏のパイオニア精神と、長年培った技術力、そして顧客と従業員・パートナーを大切にする社風は、現在も同社に受け継がれています。
取締役 総務部長の小楠雄士 様、総務課の蓮池雅美 様にお話を伺いしました。
「120年の歴史」をどう後輩たちに引き継ぐか?
Q, 今回電子化された100周年記念誌とは、御社にとってどんな位置づけのものですか?
小楠様:
今回電子化したのは、当社が創業100年を迎えた1999年に制作した記念誌です。制作した際に社員やOB、お取引先様などの関係者に配布し、その後も新入社員が入社するたびに1冊ずつ配布してきたのですが、実物は当社にもあと10冊ほどしか残っていません。そろそろ、どうしようかな…と思っていたところでした。

「非破壊」で、「InDesignデータ化」を行うには?
Q, なぜInDesignデータ化される必要があったのでしょう?
小楠様:
実は創業120年の節目の記念事業として新たに「120年記念史」を作れないか、という思いがあり、出版社に相談をしたんです。すると
「イチから作るとそれなりの価格になるが、前回100周年記念誌を制作したときの“データ”があれば比較的安く抑えられる」
とのこと。それならこれがある、と、「100周年記念史」の書籍を見せたのですが、
「これは“データ”とは言わない。そうなると、イチから作るのと同じになってしまう」
と言われてしまったんですね。
その後「120年では少々早い。まとめるなら150年の節目に」という話になり、新たな社史の編纂は行わないことになったのですが、いずれ「150年記念史」を作るとき後輩が困るだろうと考え、このタイミングでの電子化を決断しました。
Q, 誠勝にお声がけいただいた背景は?
小楠様:
電子化にあたっては「非破壊」が重要なポイントでした。実は別の会社にも相談したのですが、書籍を裁断してスキャンする形になってしまうと言われました。
当社は歴史も古く、パラフィン紙に描かれた100年前のポンプの図面も保存している会社。私自身が歴史好きなこともあり、一次資料の大切さは理解しているつもりです。

そこで「非破壊」で電子化ができる会社をネットで探してみたところ、誠勝のウェブサイトを見つけました。私共もBtoBの企業ですので、特に学術機関や公共機関などの実績を拝見し、ここなら大切な資料を丁寧に扱っていただけるのでは…と。
最初に数ページのテストサンプルをご提出いただけたので、安心して依頼できました。決め手は…ご対応いただいた山本社長の人柄ですかね(笑)
Q, 仕上がりはいかがでしたか?
小楠様:
依頼してからデータの納品までだいたい2か月ぐらいでしたが、本当にあんなにキレイにできるとは思わなかったです。私もふだん電子書籍を読んでいますが、紙の書籍からここまで見やすいデータにできるとは。
データがあれば、様々なシーンで活用できる
Q, 実際に電子化されたデータはどのようにご活用される予定ですか?
小楠様:
社史を新たにまとめるアイデアは持ち越しとなりましたが、今回電子化したことで、次のタイミングで後輩たちが困らない状況にはできたのでは、と思っています。まずは一部をイントラネットで共有し、社内教育用に活用する予定です。
また当社では毎年4月3日の創立記念日に社員やお取引先様、OBもお招きした記念行事を実施しているのですが、すでに電子化されたデータが手元にあれば、そうした節目節目で、いろいろな活用が考えられると思います。現在も「120年記念」のパーティは企画しており、その場にパネルやスライドショーのような形で展示するためにも活用するつもりです。

アーカイブに触れることは、創業時の精神を受け継ぐこと
Q, 本当に歴史を大切にされているのですね。
小楠様:
今、新入社員が入社すると、100年前のポンプの図面をCADで起こすという研修をしてもらっています。テクニックだけでなく、創業時の精神みたいなものを受け継ぐために、こうしたアーカイブに触れることは大事ですよね。
ただ当社の場合、そうした紙資料を大切に保管しているのは、お客様からのお問い合わせに対応するために必要だから、という側面が強いです。
蓮池様:
長くお使いいただく製品なので、例えば納品後しばらくして当社の営業マンが代わったりしても、同じようにサポートを続ける必要があります。過去の製品の資料を引っ張り出して対応することは、よくありますね。

小楠様:
「最後まで納めた製品に責任を持つ」というのが当社の姿勢です。数十年前に製品を納めたお客様からのお問い合わせにも対応してしまう(笑)。歴史と技術に基づいた品質や信頼性が、当社の強みです。アーカイブが残っているのは、「結果」でしかありません。

社内には博物館級ともいえる旧い機械などもいくつか保管しているので、そうしたものもいつか「大田区のモノづくり文化」を伝える資料として地域に還元できるといいな、という話はしていますね。
●宇野澤組鐵工所