SAIKA 関田彩果様

絵画電子化

Asia Fashion Collection 10th TOKYO STAGEグランプリ受賞 〜「憧れと自分に忠実な服」を表現するためアートスキャンを活用〜

時代と共に変化するファッション。
今回、絵画そのままスキャンをご利用いただいた「SAIKA」代表の関田彩果さんは、「憧れと自分に忠実な服」をコンセプトに展開するファッションデザイナー様です。2022年10月渋谷PARCOで開催された「Asia Fashion Collection 10th」TOKYO STAGE(以下:AFC)ではグランプリを受賞。


絵画そのままスキャンでは、AFCに出展した2023SSのシーズンテーマ ”never ending home” の代表ルックの元となる絵画作品のスキャンを担当させていただきました。


関田様のファッションデザイナーとしての想い、今回の代表ルックとご利用いただいた絵画作品、誠勝をご利用いただいた経緯などについてお伺いました。

「憧れを抱く部屋の中の自分に忠実でいたい」

この度はグランプリ受賞おめでとうございます。

関田様:ありがとうございます。おかげさまでAFCでグランプリを受賞することができました。

受賞されたコンペティション「Asia Fashion Collection」について教えてください。

関田様: AFCはブランドそのものを評価するコンペティションです。


一般的なコンペティションでは製作した1体のみで評価順位が決まってしまう場合が多いのですが、AFCでは全6ルックを出展し、服のデザインだけでなく、ブランドの価値・メッセージ性・ビジネス性なども含んだブランドとして評価をしてくれる点が大きな特徴です。


また、AFCでグランプリを受賞するとニューヨークで行われる公式のコレクションにファッションデザイナーとして出場できるという理由から業界からも注目を集めています。

「SAIKA」の今シーズンのテーマついて教えてください。

関田様:「SAIKA」というブランドは”憧れと自分に忠実な服”をコンセプトにしています。
今シーズンのテーマは ”never ending home”。
「憧れを抱く部屋の中の自分に忠実でいたい」という想いがあります。


私を例にしてお話すると、私の部屋は物に溢れていて、散らかってるんですよ。そういう散らかった部屋の中にもかわいいキャラクターのフィギュアがあったり、きれいな服があったりして、なりたい自分の憧れが散りばめられています。


だけど、今のファッションの感じって「憧れだけを追った服」だったり、逆に「今の自分というアングラな部分を表した服」のようなどちらかに振り切った服が多いというイメージがあるんです。でも、私は散らかった部屋の中でかわいいキャラクターに憧れているということが「すごくいい」「その両方が同時にある景色がいいなぁ」と思ったんですよね。


2023SSはそんな「”憧れ”と”自分”に忠実でいたい」という想いを6体のルックで表現しました。

「SAIKA」の6ルック
▲AFCでの「SAIKA」の6ルック

代表ルックについて教えてください。

関田様:今回スキャンしていただいた絵画作品を用いた代表ルックは、「憧れを抱く部屋の中の自分」の象徴でもあります。


今回の代表ルックは私の祖父のアトリエからインスピレーションを得た作品なんです。
祖父は絵を描くことを趣味としていた人なのですが、祖父のアトリエに入った瞬間に衝撃を受けました。アトリエの扉を開けて絵画作品と部屋全体を同時に目にした瞬間、色々な気持ちが湧いてきたんです。


絵画作品と部屋とを同時に見るってなかなか無いことだと思うんですけど、祖父が憧れた景色(絵画作品)と祖父がいた部屋を同時に見たときに、”憧れてる自分に忠実にいる”って「こういうことだな」「これが一番いい形だな」と思いました。


この絵画作品を額に入れて、白い壁に飾ってもいいけど、私は「この絵を部屋と一緒に見たいな」って思いました。
この経験があったからこそ今回は”憧れ=絵、自分=部屋”と定義づけてコレクションを作ろうと決めました。


だから、この代表ルックは今回のコレクションの最後を飾る作品として「憧れた景色が描かれた絵画」と「部屋」と「服」の間みたいなものを服として表現したいと思ったんです。


絵画作品はすごく大きくて、実際のサイズ感も表現したかったから代表ルックは全身に纏える服をデザインしました。

デザイン画
▲代表ルックのデザイン画。

だからTシャツ1枚にプリントするのではなく、大きな服のデザインになっているのですね。

関田様:そうですね。


ランウェイではモデルさんにファブリックパネルを手に持って歩いてもらったのですが、プリントした布をキャンバスに貼ってランウェイを歩いたら絵のイメージとサイズ感も伝わるかなと思ったんです。


絵って本来ピシっと平たいけど、部屋の中のゆるい感じを出したかったからシワもよせて部屋らしさを表現しています。


代表ルックの作品
▲代表ルックの作品

ちなみに、この足先に履いている物は何を表してるのでしょうか?

関田様:これは靴下をベロベロに伸ばして履いているんです。部屋らしいルーズさ、だらしなさを表しています。こういうのって部屋の中でしかやらないことじゃないですか。他のルックでも手に履いたりして、部屋らしさを表現しています。

「絵の専門の会社に依頼してよかった」

今回の「絵画そのままスキャン」はどこで知っていただけましたか?

関田様:AFCで『祖父の絵画作品を使った、服を作りたい』と思い、以前誠勝の「絵画そのままスキャン」を利用したことがある知人に相談したら『ちゃんとしたスキャンのところに頼んだら凄い綺麗にできるよ』ということで、紹介してもらいました。


知人が以前、誠勝さんにスキャンしていただいた絨毯のスキャンデータを見せてもらったのですが、絨毯の毛足の細かなところまで映し出されていて「私もここでスキャンしたい!」と思い、その流れで利用させてもらいました。


知人からも「誠勝さんは絵画を扱ってる会社だけど、服のことは全くわからないと思う」と伺っていて、私は「むしろその方が今回の依頼内容にマッチしているから信頼できるな」と思ったんです。


完成データのクオリティ・感想はいかがでしたでしょうか?

関田様:作品そのままのタッチでスキャンされていて普通に「すごいなぁ」と思いました。


利用する前は、どうやってスキャンするのかイメージできなくて「どうやってスキャンするんだろう?」「絵を潰しちゃうのかな?」とか不安もありましたが、スキャン台に置いてスライドしながらスキャンしていたので、安心しました。

▲絵画作品のスキャンデータ

服の製作に用いる布にスキャンデータをプリントしたときも色味がきれいに映し出されていたし、ピントがボケているところもあるかと思ったけどそんなこともありませんでした。


担当者の対応はいかがでしたか?

関田様:スキャンしていただいた作品も丁寧に扱っていただいて「やっぱり絵の専門の会社に依頼してよかったな」と思いました。


今回の絵画作品は大きいうえに北海道から東京に送ったので、曲がらないようかなり頑丈に梱包していたのですが、その梱包も丁寧にほどいていただいて、安心できました。

絵画作品
▲関田様のご祖父様のアトリエと絵画作品たち。スキャン利用いただいた作品は150cm以上になる。

スキャン利用においてはチェーン展開しているプリント業者も検討しましたが、私がスキャン依頼した絵がすごく大きい作品なので、対応してもらえるのか不安がありました。

「ファッションを通して景色を共有したい」

高校時代にも「AFC U-18(※)」に出場されていますが、ファッションデザイナーとしてのルーツを教えてください。

関田様:ファッションデザイナーを志したのは高校生のときですね。
元々は高校生のときは美術の先生になろうと思っていたのですが、彫刻が上手くできなかったので違う道を模索していました。そんな中でも、昔からかわいい女の子がずっと好きで、当時から雑誌の女の子を題材に絵を描いていたんです。


かわいい女の子の絵を描いていく中で「服ってすごいな、女の子がどんどん可愛くなっていくな」と思うようになったのをキッカケに「服で女の子をかわいくしたいな」くらいの気持ちから、次第にファッションに興味を持つようになりました。


そんな好奇心が湧いていたときに、ちょうどAFC U-18のファッションコンテストがエントリー受付をしていたのでデザイン画を提出したら、ありがたいことにファイナリストとして選出していただきました。それから、もっと勉強したいと思うようになって、北海道から東京に上京してファッションの世界に飛び込みました。


※AFC U-18(現在は「ファッション選手権U-18」に名称変更)とは・・・Asia Fashion Collection実行委員会が主催する、中高生を対象としたファッションコンテスト。デザイン画を提出し、ファイナリストに選ばれた方は実際に服作りを行う。

ファッションの面白さ、魅力は?

関田様:ファッションは、身にまとうことで見たい景色を作れるところが魅力です。
立体的で、何でもできて、自由度が高いからこそ難しいところもあるけど、凄い広い選択肢があるから面白いと思います。


でも、私は見たままの私の感覚を言葉にして伝えるのはうまくできません。
私にとって、その感覚を景色にして共有することができる方法がファッションなんです。

デザインをまとめたブック
▲今シーズンのコンセプトやデザインをまとめたブック

今後はどのような活動をしていくのでしょうか?

関田様:もっとブランドや服としての価値を高めていけるファッションデザイナーとして成長していきたいですね。


「ファストファッションのお店にいけばパンツ1本5,000円以下で買えるけど、大手百貨店に行くと平気で数万するのってなんでなの?」と言われるようにファッションとしての価値はなかなか伝わりにくいという点があります。


この課題を解決するには、今の私ではまだまだ足りないことが多いので、もっと色々な作品を見て・触れて・経験しながら日々成長していきたいです。


ファッションショーでも「これはこうだな!」ってすぐ分かってしまうと面白くないけど、ランウェーを歩いている間に「これはこういう意味なのかなぁ?どうなってるんだろうなぁ?」と考えている間に終わっていくショーが私は良いコレクションだと思っているので、そんな服をデザインして”景色を共有できる”ファッションブランドを作っていきたいです。


SAIKA

<関田彩果>

北海道出身。「憧れと自分に忠実な服」をコンセプトに展開するファッションブランド「SAIKA」代表。
2022年10月には渋谷(東京)で開催された「Asia Fashion Collection 10th」TOKYO STAGEにてグランプリを受賞。2023年2月にはニューヨークで開催されるファッションショーのランウェイデビューを予定している。

【Instagram】https://www.instagram.com/saikasekita/