株式会社ゼロファーストデザイン様
一部では『高尚なもの、普段の生活から少し離れたもの』というイメージもある、芸術作品。実は近年、芸術をより生活へ取り入れようとする傾向が日本国内でも生まれ始めています。
今回絵画そのままスキャンをご利用いただいた株式会社ゼロファーストデザイン様は、家具をはじめとしたインテリアをオーダーメイドでデザインしてきた会社様。『心地よい生活とは何か』を追求しながら、アートで生活を豊かにしたいと考える方々のご要望に長年応え続けてきました。
今回絵画そのままスキャンでは同社様より、建材にデザインとして使用するための『書』をスキャンさせていただきました。
株式会社ゼロファーストデザイン様のショールームにて、同社チーフデザイナーの椎名健一様、作品を提供された一般社団法人アートのある暮らし協会の石川薫様に、『アートと暮らしの関係』も交えながら今回のスキャニングについてお話いただきました。
アートを巡る近年の傾向とは?
素敵なショールームですね。
椎名様:弊社の製品が展示されているショールームです。弊社の事業領域としてはインテリアデザイン全般で、奥が事務所になっているのですが、ショールームでは様々なインテリア建材の使い方の提案やサンプルを展示して、お客様との相談に使われています。
元々はこのテーブルのような木製品の家具の販売をしており、工場と色々な提携をすることが多いので、そういった木製品のオーダーメイド家具を受注することが多いですね。
様々な家具屋さんがある中で、あえてオーダーメイドを欲しいと思う方が多い。
椎名様:今、家具はデフレ化していて、量販店でもネットでも安価で良い品質のものが手軽に購入できます。一方で海外のもの含め、ネットや雑誌で情報が瞬時に入るようになっているため、ここ数年で『こういう家具が欲しい』というお客様のご要望が強くなってもいる。家具メーカー様の生地サンプルもあるのですが、『どうしても、こういう生地が好きだから使えないか』というオーダーを受けた時は、生地メーカー様から調達して家具メーカー様に支給し、オリジナルのものを作っていただく、ということもあります。
装飾品ではなく、あえて家具などの実用品に取り入れるという傾向があるのですね。
椎名様:そういった傾向が一般の方から出てきていますよね。アートは美術館へ見に行くものではなくて、自分の暮らしの中に取り入れて、より豊かに家で過ごす、という。アートは単に飾るものではなく、家具や服のような身近なものになっていくのではないかと思います。特に海外ではそのような傾向になっていますね。
石川様:アートをより身近にし、取り入れてもらうためにはそれを提案できる人材、一般の方とアートの橋渡しをする人材が必要です。私たちの協会で行っているのがまさにそういった人材の養成で、創立以来『アートライフスタイリスト』という資格を作り、いろんな人にアートをより身近に感じてもらえるようなお手伝いをしています。
まさに個々人に応じた提案をされている。
石川様:そうですね。個人のお客様に対してだけでなく法人のお客様に対しても、その姿勢は変わりません。ある企業さんのオフィスにアートを入らせていただいた時は、企業の理念や社訓をヒヤリングしてぴったりのアーティストを紹介し、企業理念やビジョンを基にした壁画を作成させていただきました。常に目指しているのは、お客様とアーティストとの間を取り持つことでお客様の理想を具現化するということです。
アートを分かっていると感じた
今回ご依頼いただいた書の作品も、そのような形で協会様からお借りしたのですね。
椎名様:今回ある建材メーカー様から、壁面に使用する商品として『アートを取り入れた建材』を開発したいというお話をいただきました。その為には作品をデータ化し、デザインの素材として使用できるようにする必要がありました。
弊社子会社で、世界中のインテリアの展示会を取材し、トレンドやメーカーの動向をまとめた『インテリアトレンドビジョン』という冊子を毎年出版しているのですが、ここでの情報を見ると『自分だけのオリジナル、既製品よりアーティスティックなものが欲しい』という流れが、特にここ数年で一般化していることがわかります。
今回のご相談は、インテリア建材もそういった傾向になると踏まえた上でのものだったと思います。
その上で、お客様が選びやすく、インテリアに合わせたコーディネートが出来るようにしたいという前提がありました。そこでメーカー様と採用するアートを検討したのですが、その際に『こういう作品を描く方はいませんか?』と協会さんに相談させていただきました。
石川様:それで提供させていただいたのが白石雪妃さんの作品でした。
書をアート作品にまで昇華して書かれているアーティストさんで、これまでにもオフィスの壁面や店舗のみならず、サッカー日本代表の公式ユニフォームのロゴマークなど様々な場面で作品が使用されています(下写真)。
スキャンより一般的な、一眼カメラでの撮影は難しかったのでしょうか。
椎名様:サンプル等で検討していた時はアーティストさんが撮影した画像を見ていましたが、実際に商品としてデータを作っていく場合、解像度や色などの問題でカメラでは…と。
石川様:我々の団体でも、書籍や雑誌に掲載する時は一眼カメラで撮った画像使用しています。ただ今回は作品のサイズに即した大型の商品ですから、どうしてもカメラだと限界があるということになりまして。
椎名様:インテリアの建材ですから使い方も様々なケースが考えられます。作品を組み合わせたりリサイズ・リピートすると大きさも変わりますし、ジョイント部分の色が変わってしまうと少し問題になります。原画のサイズは決まっていますし、元データはクオリティが良くなければなりませんでした。
なので、今回は最初から非常に解像度の高い画像が必要だったんです。ならばアートスキャンだろうと。
では、なぜ当サービスにご依頼いただいたのでしょうか?
椎名様:ホームページを拝見して『アートのことをよく分かっていそうだな』と感じました。また、大きいサイズを一度で撮ってもらえるというのが大きいですね。何枚かに分けて撮ったものを後から合成して…ではなく、今回のように大きな作品でも対応してもらえるというのも重要でした。
ありがとうございます。非接触スキャナーは初めて見たとのことですが、いかがでしたか?
椎名様:今回はモノトーンの書ですから、凄く真っ黒な所もあれば滲んだ部分もある。和紙に目いっぱい書かれている訳ではないので、余白もあります。そういう所含めての『作品』ですが、アートスキャンすると和紙の繊維まで表現されるのが、やはりすごいなと。
スキャニング自体も30分くらいで終わりましたし、連絡もこまめにいただけたので、全体的にも丁寧でしたね。
データはメーカーさんに提供した後、数年かけて商品化する予定です。実物に印刷すると色が変わるので、どこまで許容できる範囲なのかなど、しばらく試作を行っていきます。
石川様:どんな風に仕上がっているのか、滲みがどのように仕上がっているのか、私もアーティストと一緒に楽しみにしています!
『暮らしの中のアート』を追求し続ける
今後、やってみたいことはありますか。
椎名様:スキャンという手法で言えば、オーダーメイドで住空間をデザインするために、やはりメーカーのカタログから選ぶ以外のこと、例えば自然素材をスキャニングして複製・拡大縮小するといったようなことを『データ』として扱い、デザインへと展開したいですね。
もう一つは、ここにしかない一点ものを取り入れること。この無垢板のテーブルのように、原木の状態で見ていただき、部屋に合うようなデザインをしたいですね。木だけでなく石も、模様等含めそれ一つしかありませんし、デザイナーからするとデザインのソースの一つです。
その二つの要素を同時に扱いながら、インテリアを考えたいと思っています。
石川様:『アートライフスタイリスト』を取られるのは建築やインテリア関係の方々ばかりではありません。そうでない一般の方にも広がっています。アートのニーズとして、従来の投資目的や、高額な作品を所有することでの対外的なアピールだけでなく、自分の生活を豊かにする為、自分のビジョンを体現する為という方向に向かっていっているんじゃないでしょうか。
先ほどお話した企業さんも、理念から抽出したメッセージの込められた作品をオフィス内に設えることで、働く人のマインド向上、チームワークの高まりといった効果を狙っていたそうです。こうした傾向は、今後日本でもどんどん広がっていくと思いますね。
●株式会社ゼロファーストデザイン(http://01st.com/)
●一般社団法人アートのある暮らし協会(http://artlifestyling.com/)
<白石 雪妃(しらいし せつひ)>
22歳で師範取得後、他芸術とのコラボレーションなど書道を総合芸術として昇華させる独特の世界観は高く評価される。在アメリカ合衆国日本国大使館JICCなどの他、NYやパリでも個展を開催。
日本でも2014年FIFAW杯日本代表新ユニフォーム揮毫、(株)資生堂クレドボーボーテの「6人の女性たち」選出など、国内外問わず活躍している。
日本オラクル株式会社の壁画制作等、他実績多数。