ビジネスの分野だけでなく学術研究の分野でも、また個人ベースでも、今やPDFは広く利用されているファイル形式です。それにも関わらず、「ではPDFって、具体的にどんなものですか?」と尋ねられて、すぐに答えることができる人はそんなに多くはいないはずです。
そこで今回は、このPDFを取り上げて、PDFとは何ものなのか、PDFにするとどんなメリットが得られるのか、また紙をPDF化する際の注意点などについて、PDFの機能や活用方法も含めて解説していきます。
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PDFとは?
PDFは、米国のアドビシステムズ社が開発したファイル形式で、2008年7月に国際標準化機構(ISO)によって標準化されて以来、急速に普及してきました。
この呼び名PDF(ピー・ディー・エフ)は、Portable Document Format(ポータブル・ドキュメント・フォーマット)の頭文字からきています。「ポータブル・ドキュメント・フォーマット」と言われても、「持ち運び可能なドキュメント・フォーマット?」と首をかしげてしまいますよね。
そこでここでは、PDFについて、辞書的な意味、誕生した背景、作成の方法、メリットといった順序で詳しく説明していきます。
PDFの意味
小学館の「デジタル大辞泉」によると、PDFとは、「《portable document format》米国アドビシステムズ社が開発した、電子文書のファイル形式。テキストや画像のほかに、フォントやレイアウトの情報が収められており、パソコンの機種やOS環境に依存しない表示が可能。」と解説されています。
つまり、機種やOSに関係なく、どのパソコンでも読み取ることができるファイル形式だということです。
多くの場合、Windowsで作成したファイルはWindowsでしか読み込むことができない、といったような互換性の問題が発生します。それがPDFを介することで、どんなファイルも互換性に縛られることなく読み取ることが可能になるということです。
ここでやっと「ポータブル」という言葉のもうひとつの意味が浮上してきます。コンピューター用語で「移植可能な」という意味です。「移植可能な」というのは、特定の環境でしか動作しないソフトウェアをそれ以外の環境でも動作するようにする、という意味が含まれた言葉です。PDFは、そういった意味での「ポータブル」なドキュメント形式だということなのですね。
誕生の背景
米国のアドビシステムズ会社によってPDFがリリースされたのは1993年のことですが、開発自体は1991年にアドビの共同創設者であるジョン・ワーノック博士の立ち上げたプロジェクトをもとに開始しています。
どのようなプロジェクトかというと、作成されたアプリケーションを問うことなく、どんな文書でも読み取ることができ、それを電子化することでどこへでも送信し、どんなコンピューターでも表示・印刷することができるようにするツールを提供するというプロジェクトでした。
通常、あるアプリケーションで作成した文書は、そのアプリケーションが入っているパソコンだけでしか開くことができず、パソコン自体が同じものでない場合は、レイアウトやフォントが変わってしまう可能性がある、といった問題が発生します。そういった時代の背景を考えると、このワーノック博士の立ち上げたプロジェクトは画期的なものでした。
そしてそのプロジェクトの目標は達成され、1992年にその成果としてPDFが誕生したのです。
作成方法
※PDFのファイルを読み込んだり表示したりするには、専用のソフトが必要になります。ご使用のパソコンやタブレットに事前インストールされていることもありますが、もしまだインストールされていないようであれば、アドビ社が無料で提供している「Adobe Reader(アドビ・リーダー)」をダウンロードしておきましょう。
PDFファイルの作成方法には、大きく分けて2通りあります。
1.WordやExcel等で作成→PDFに変換して保存
Microsoft Office10以降のWord、Excel、PowerPointなどでは、Acrobatリボンを使ってファイルをPDFファイルに変換することができます。
- Officeアプリケーションでファイルを開く
- Acrobatリボンの「PDFを作成」ボタンをクリック
- 表示されたダイアログボックスで「PDFを保護」を選択
- 次のダイアログボックスで必要に応じてパスワードとアクセス権を設定し、他のユーザーの操作を制限
- 「OK」をクリックし、PDFの名前を指定して、目的の場所に保存
※引用:Word、ExcelまたはPowerPointファイルをPDFに変換 (Adobe)
Microsoft Office9以前のWord、Excel、PowerPointで、Acrobatリボンが表示されない場合は、ファイルの保存時に「エクスポート」でPDFを指定します。
- 該当のファイルを開き、トップバーの左端の「ファイル」をクリック
- 左のサイドバーから「エクスポート」をクリック
- 次に表示される画面の「PDF/XPSの作成」ボックスをクリック
- ファイルの保存場所やファイル名を指定し「発行」をクリック
2.最初からPDFファイルを作成する
もう一つの作成方法は、既存ファイルの変換ではなく最初からPDFとして作ってしまうというものです。
この場合、専用のPDF作成ソフトをインストールする必要があります。アドビ社が提供している正規版のAcrobat DCという有料ソフトをインストールする方法もありますが、現在は、いろいろな会社がPDF作成ソフトを有料または無料で提供しています。セキュリティーなどの問題もありますので選ぶ際には十分に調査をすることをお勧めします。
※参考:アドビ社Acrobatについて
紙と比較した時に優れているポイント
PDFは、データを紙に印刷したときと同じ状態を保ったまま保存することができるために、「電子の紙」と呼ばれています。そこでここでは、紙ベースの書類と比較した際に、PDFファイルの方が優れていると思われる点を上げます。
すばやく配信したりアクセスできる
紙ベースの書類は、送付する際に郵送またはファックスで送ったり、あるいはスキャンしてデータ化し、メールに添付して送ったりしなければならないために、余分な作業が発生します。
これに比べてPDFファイルは、それそのものが電子化された情報なので、瞬時に先方に、しかも同時に複数の宛先へ配信することができます。また、保存場所のアドレスさえ公開しておけば、誰でも必要になった時にどこからでもすぐにアクセスすることが可能です。
セキュリティーが強化される
PDFでは、Acrobat DCなどで書類を作成する際に、紙ベースの書類と同じように署名・捺印を取り入れることが可能ですが、さらにパスワードを設定することで、その書類を開示できる人物を制限することができます。つまりセキュリティーが強化されるということです。
データの劣化や破損がない
紙ベースの書類は、経年による黄ばみや傷みが生じます。また紛失する恐れもないとは言えません。
これに比べて、PDFファイルは、電子化されたデータであるため、劣化したり破損したりすることがありません。また、紛失の心配もありません。
そのままの状態のデータを後世に引き継げる
上記でも述べているように、紙ベースの書類やデータは、経年による劣化や破損、あるいは紛失などが生じて、ほとんどの場合、後世へそのままの状態で引き継ぐことはできません。
これに対して、PDFファイルで保存されたデータは、そのままの状態で後世へ引き継ぐことができます。
瞬時に検索できる
紙ベースの書類は、バインダーなどにファイリングして、棚や倉庫に保管しますが、必要になった時に、保管場所に出向いたり、バインダーの中を探したりしなければならず、時間と労力がかかってしまいます。
これに対して、PDFファイルで保存した場合は、パソコンやタブレットがあれば、どこにいてもすぐに検索することができます。
PDFでできること
今や、個人だけでなく、世界中の企業や官公庁などで使われているPDFですが、このPDFを使うことでどういったメリットが得られるのでしょう。以下では、PDFのメリットを理解するために、PDFでできることについて考察していきます。
公共性をもたせる
PDFは、誰でも利用できるオープンフォーマットです。
PDF作成ソフトがあれば、誰でもPDFファイルを作成することができます。またAcrobat Reader(Adobe Reader)がインストールされていれば、アプリケーションや機種に関係なくどの環境でも読み取ることができます。さらに、すでにWindowsやExcelやPowerPointなどの他のアプリケーションで作成されているファイルも、PDFに変換することができます。
このようにPDFを使うことで、ファイルに公共性をもたせることが可能になります。
ちなみに、Acrobat Readerは1994年に無償配布が開始して以来、そのダウンロード数は5億回を超えているといわれています。このことからも、PDFが世界中の人々に広く利用されている、つまり必要とされているのがよくわかります。
標準化することができる
通常、ファイルは、それを作成したアプリケーションやプラットフォームなどの環境に依存します。つまり、同じアプリケーションやプラットフォームでないと開くことができないということです。
しかしPDFは、マルチプラットフォーム仕様なので、どのような環境でも開いて読み取って印刷することができます。これが、PDFが「紙に代わる電子の紙」と言われる所以です。
しかも、PDFファイルは、どのような環境でも、元の文書と同じように表示されます。アプリケーションや機種によって文字が読み取れなかったり文字化けしたりすることはありません。これは、PDFでは、文字そのものにフォントを埋め込むことができるため、そのフォントを持っていない環境でも、元の文書どおりに表示し印刷することが可能だということなのです。
このように、PDFは、どのファイルも環境から独立させて標準化することができます。
軽量化することができる
通常、PDFファイルに変換すると、元々のファイル(WordやPowerPointやIllustratorで作成したファイル)のサイズは小さくなりますが、メールに添付して送信する場合などにもっと小さくして軽くする必要が生じることがあります。
そのような場合、PDFの「ファイルサイズを縮小」機能を利用すれば、さらにファイルサイズを小さくすることができます。
ファイルサイズを小さくすると、メールでやりとりする時だけでなく、Web上に配信したり、Web上に配信されたPDFファイルにアクセスする場合も、素早く行うことができます。このようにPDFは、ファイルの軽量化を可能にします。
セキュリティーを設定することができる
PDFファイルは、「電子の紙」と言われるだけあって、読み取った時点でそのファイルを改ざんできないようになっていますが、さらにパスワードを設定することでセキュリティーを強化することが可能です。これをPDFのパスワードセキュリティーと言います。
このパスワードセキュリティーを設定すれば、PDFファイルを読み取る際に、ファイルを開くためのパスワードを設定したり、そのユーザーに対して、コンテンツの一部をコピーできるか否か、印刷することができるか否か、編集することができるか否かといった権限を設定して、セキュリティーの強化を図ることが可能になります。
共同作業を効率化させる
PDFの構造は、元々の文書の「文書層」と、その文書に書き込む注釈やコメントなどの「付帯情報層」に分かれています。そのために、閲覧時に何か注釈やコメントが書き込まれても、それらは付帯情報層に書き込まれていくだけで、元々の文書が記録されている文書層は変わることはありません。
この機能は、複数の人間で役割を分担して編集したり、文書の校閲や校正を行ったりする共同作業を効率よく進めていくうえで役に立ちます。
この例が、「オンライン校正」です。従来は紙ベースで行っていた校正作業を、PDFを利用することで、オンラインで、しかも複数のスタッフが分担して進めることができるということです。このようなオンライン校正は、用紙にかかるコストが削減されるだけでなく、仕事の効率も上がるということで、現在、さまざまな現場で取り入れられています。
コストを削減する
社内で作成した文書が環境依存のファイルの場合、アプリケーションがバージョンアップした際に、プラットフォームとの間に互換性がなくなるといったような不都合が生じたり、あるいはプラットフォームでそのバージョンをサポートしなくなったりして、将来的にそのファイルを開くことができなくなる恐れがあります。そうなると、全社的なメンテナンスが必要となり、そのための人件費が発生します。
しかし、そういった社内資料をPDFで統一しておけば、どのような環境になってもファイルを開くことができるので、問題も発生することはなく、メンテナンスにかかる余分なコストも発生しません。
さらに、上記のオンライン校正などのように、紙ベースでしていた作業をオンラインで行うことができるようになるため、用紙にかかっていた費用も削減できます。このように、PDFは、コスト削減にも貢献すると言えます。
情報の再利用を可能にする
PDFは、よく文書を画像化したものだととらえられることがあるようですが、実際には、そうではありません。PDFは、テキスト情報とグラフィック情報が分けられているために、個別に操作することが可能なのです。
どういうことかというと、テキストだけの検索を行ったり、テキストの必要な個所をコピーしたり、必要なグラフィックだけを選んで、別のファイル、たとえば、Word文書などに貼り付けて利用するといった操作ができるということです。このように、PDFでは、情報の再利用を可能にしてくれます。
Acrobat DCの機能
無料のPDFビューアであるAcrobat Reader DCは、文書に注釈をつけたりハイライトをつけたりすることはできますが、文書そのものを編集することはできません。編集するためには、有料のAcrobat DCが必要になります。Acrobat DCには、Acrobat Standard DCとAcrobat Pro DCの2タイプがあります。
Acrobat Standard DC
Acrobat Standard DCでは、PDFファイルの作成と編集のほかに、次のような機能が備わっています。
- スキャンした文書を検索可能なPDFにする
- PDFをオフィス文書に変換する
- フォーム機能やオンラインでの共有も可能
- 複数のPDFファイルをまとめる
- 他の人がデータを編集できないようセキュリティー機能を有効にする
- 電子証明書もサポートする
Acrobat Pro DC
Acrobat Pro DCでは、さらに次のような機能を提供しています。
- スキャンした画像をワンクリックで補正&文字認識する
- スキャンしたデータを編集可能なPDFにする
- PDFのファイルサイズを自動的に最適化する
- 文書に通し番号を追加する
- 作業手順を登録・保存・共有できる「アクションウィザード」が利用できる
- 2つのバージョンのPDFを比較して差分を確認できる
- Macでも利用できる
- iPadアプリでPDFファイルにテキストを追加したり編集したりできる
※引用:Acrobat Pro、Standard、Readerの違いは? (ASCII.jp)
自分(社内)でPDF化するのが難しいケース
どのような資料もPDF化することで、環境に依存することなく、どこでも閲覧することが可能になります。ただ、データ化されているものはそのまま変換すればPDFファイルにすることができますが、紙ベースの資料をPDF化するには、まずスキャンしなければなりません。この時に、以下のような資料を扱う場合に問題が発生することがあります。
- 貴重資料だが経年劣化が激しく、裁断したくない
- 大量の資料
それぞれ、簡単に解説していきます。
貴重資料だが、経年劣化が激しい資料
痛みが激しい文書は、スキャニングでさらに傷んだり破損したりする可能性があります。また、貴重な資料ほどオリジナルのものを残しておく必要が生じますが、通常のスキャンでは、裁断してスキャニングを行わなければならないために、大切なオリジナルの文書がばらばらになってしまいます。
大量の資料
量も問題です。数ページの文書だと時間もそれほどかかりませんが、数十ページ~100ページを超えるような文書だと、そのスキャニングに多くの労力と時間がとられるため、生産性の低下につながります。
このような場合は、自分または社内で行うよりも、PDF化の専門業者に任せる方が無駄がなく、また事故も起こることがないので安心です。
当サイトを運営するそのままスキャンは、こういった場合のPDF化に対応できるサービスです。しかも非裁断スキャナーを使っているために、大切な文書や資料を裁断することなくPDF化を行うことができます。紙資料のPDF化、特に貴重資料をPDFへ変換したいとお考えの方はお気軽にご相談ください。
まとめ
PDFは、ひと昔前までは、どちらかというと特殊なイメージを持つフォーマットでした。Wordファイルなどのように、他のアプリケーションで作成したファイルをPDF化することなどもすぐにはできませんでした。それが今や、さまざまなシーンでPDFファイルが大活躍をしています。
配布されて読み取るといった形で利用することが多いPDFファイルですが、無料のソフトなどをインストールして、PDFファイルの作成を楽しんでみると、よりPDFのすばらしさを理解できるかもしれません。