水彩画で絵を描かれる方は、作品をデータ化(スキャン)する時どうしていますか?
多くの場合スマートフォンでや一眼レフでの撮影で済ます方が多いと思いますが、絵画作品にはスキャニングという手段もあります。ただそのスキャニングにしてもやり方やメリット・デメリットは様々です。 アートスキャニングサービスを展開する「そのままスキャン」が、水彩画をスキャンする方法についてそれぞれ解説しましょう!⇨【「美術手帖」でも紹介!】作品へ触らず高画質なスキャニングが出来るサービスはこちら
Table of Contents
水彩画をスキャンする方法
「スキャン」と「撮影」はほぼ同じ意味になるため、ここでは「スキャナー」以外の機材を使った方法(一般的には「撮影」と呼ばれるもの)も合わせて紹介していきます。
フラットベッド型スキャナーを使う
「フラットベッド型スキャナー」とは、上写真のようにガラス面の下にスキャナーの読み取り部分が設置されており、そこから光を出して対象物をデータ化するタイプのスキャナーです。後述のコンビニに設置されたプリンターも、広義ではこちらのフラットベッドスキャナーに該当します。
フラッドベッド型の良いところは、作品に接触してスキャンすることが出来るため他タイプのスキャナーやカメラと違ってスキャンデータの“ズレ”が起きにくいことにあります。大抵の機種でもガラス面の周辺部分に目盛りが付記されおり、初心者でも比較的正確なデータを作成することが可能となっています。インターネットで水彩画スキャンの方法として紹介されているスキャナーの多くは比較的高価なCCDスキャナーで、クオリティに関してもある程度高い水準を発揮することが出来るでしょう。
デメリット、と言うよりフラットベッド型の特徴になりますが、接触タイプ故に「作品を傷つけてしまう恐れがある」ことが注意点です。
例えば上写真は弊社のフラットベッド型で書籍をスキャンした時のものですが、フラッドベッド型の場合はこのように対象物をガラス面に当てて置く必要があります。スキャン時間はものの数秒ですが、水彩画のようにデリケートな支持体では表面が傷つく可能性は十分考えられます。
後述する絵画専用スキャナーと違って操作が容易であり、弊社でも作品によってはフラットベッド型でスキャンさせていただくことがございます。ただし「作品にガラス面を当てる」という工程から、あまり絵画スキャンの方法としては採用していません(スケッチブックや通常の紙に描かれたイラストで一部、使われることがあります)。
インターネットで絵画のスキャン方法を探すと、このフラッドベッド型(の、CCDスキャナー)を使ったスキャニングが一番表示されると思います。もちろん市販のフラットベッド型でも十分なクオリティのデータを出せるのは間違い無いのですが、その工程で発生する懸念点も把握されるておくことをオススメします。
絵画専用スキャナーを使う(業者に外注する)
本稿で紹介する方法の中では最も一般的では無いかも知れませんが、弊社のように絵画専用のスキャナーを持っている業者へ依頼する方法もあります。その場合はスキャナーのタイプに応じて2種類に分けることが出来ます。
接触型スキャナーを使う場合
絵画専用スキャナーでは大きく「接触型」と「非接触型」に分けることができます。「接触型」は先ほどの「フラットベッド型」とほぼ同じ意味だと思っていただければOKです。ガラス面を作品表面に当て、スキャンするタイプの機材になります。
絵画専用スキャナーを所有し、水彩画のような絵画作品のデータ化を担う業者は沢山存在しますが、実は多くがこの接触型スキャナー。『原画を傷つけない』と言ってもガラス面に当てる以上、表現に何らかの影響が出る可能性があります。
非接触型スキャナー
非接触スキャナーは文字通り“作品に触れない”ことが特徴のスキャナーで、弊社で使用している絵画専用スキャナーもこのタイプです。
具体的なスキャン方法は、病院等で使われるCTスキャナーをイメージいただくと近いかも知れません。原稿台に作品を上向けで設置し、読み取り部分まで自動でスライドさせて作品のスキャニングを行うという方法です。
非接触スキャナーは読み取り部分を拡大するとこのようになっており、機材本体が作品に触れる必要がありません。『それだと作品が安定しなかったり、綺麗なデータにならないのでは?』と思われるかも知れませんが、触れないと言っても照射口から作品までは10〜20cm程度。クオリティを保てるギリギリの距離で撮影することが出来ます。
また単に触れないだけではありません。「そのままスキャン」で使用しているドイツ製の絵画専用スキャナー「WideTek 36 art」は機能の一つに3D配光というものがあります。これは作品正面だけでなくあらゆる角度からスキャンの光を照射するというもので、原画の持つ「筆致」「油の“盛り”」「作品の凹凸やディテール」まで忠実にデータ化することが出来るというもの。カメラ撮影が抱えていた“フラッシュの光で色合いが潰れてしまう”という課題を解消した、まさに美術品のために設計された最新鋭のスキャナーです。
「そのままスキャン」ではこの絵画専用スキャナーを使ったアートスキャンサービスを提供しております。スキャンは作品1枚からOK(※最低発注料金がございます)、美大生の方からデザイン事務所やプロのイラストレーター様まで広くご利用いただいているサービスです。
詳しくはサービスページをご覧ください!
⇨【「美術手帖」でも紹介!】作品へ触らず高画質なスキャニングが出来るサービスはこちら
スマートフォンでスキャン
本稿で紹介する方法の中では最も安価かつ簡単に出来るのが、お手持ちのスマートフォンで撮影してデータ化する方法です。
2010年代後半から世界中でInstagramが大流行しており、写真や動画を撮ってインターネット上に投稿するニーズが高い状況が続いています。それに伴い、かつては高価な専用ソフトを使わなければ出来なかった画像加工や修正が容易かつ無料になっており、スマートフォンの撮影でも非常にクオリティの高い作品画像を作成することが可能となってます。スマートフォンのカメラも機種によっては4Kに達しているなど、デバイスのスペック自体が飛躍的に向上していることも後押ししています。
わざわざ複雑な設定や操作をする必要ない、その場ですぐ出来るというメリットから、水彩画をはじめ絵画作品をデータ化する上では最も普及している方法です。弊社ではアートスキャニングサービスを提供していますが、たとえばSNSへアップする程度であればスマートフォンの撮影でも十分、対応出来るかと思います。
一方デメリットとしては、先ほどのスタジオ撮影や絵画専用のスキャナーでの撮影に比べると「筆致」「作品のディテール」といった原画の“生々しさ”までは捉えきれないところにあります。当然ですがスマートフォンのカメラは絵画の撮影を目的に設計された訳ではないので、この点は留意する必要があります。特に水彩画には繊細な色使いや筆致があるため、そこまでデータに残しておきたい方には悩ましいポイントかも知れませんね。
またスマートフォンはどこへでも持ち運びが出来ますが、作品はそうではないケースが殆どです。そのため、たとえアプリを使ったとしても撮影場所の環境(光、角度など)次第で撮影データに差が出てしまいます。また撮影場所のスペースによっては、大きな作品が対象の場合画面に入りきらないことも考えられます。
そのため、スマートフォンでの撮影はSNS用などの“普段使い”に留めるのが良いでしょう。
一眼レフで撮影
スマートフォン(携帯電話)のカメラが普及する前に一般的だったのが一眼レフ等のカメラによる撮影です。前述のスキャナーと違って理論上対応サイズに制限が無い一方、専用のスタジオで機材を組んで撮影すればデジタルアーカイブに使えるほどの極めて高いクオリティでデータ化することが出来ます。現在でもプロの美術品保存の現場で使われる方法です。
デメリットとしては、スマートフォンと違ってカメラの取り扱いにある程度の知識が求められること、カメラ自体を購入する場合は費用もかかってしまうことが挙げられます。先述の専用の撮影スタジオではプロによる設備・撮影が期待出来ますが、やはり費用がネックになってしまうでしょう。
また自分で撮る/スタジオで撮影する場合どちらも言えることですが、カメラでフラッシュを焚くと金銀などの絵の具部分が潰れてしまい、色独特の「輝き」が消えてしまう傾向があります。これは作品の正面から光を当てるという仕組み上、仕方の無いことではあります。
費用やハードルは高いものの、クオリティを追求するならカメラでの撮影は引き続き十分検討に値すると言えるでしょう。
コンビニのプリンターを使う
実は、コンビニに設置されている複合機で作品をスキャンする方法もあります。コンビニでスキャン、と聞くと書類がイメージされやすいですが、先述のカメラでの撮影と違って撮影環境に左右されずクオリティをキープ出来ること、自宅に家庭用スキャナーがない方にとっては最も身近で安価に「(撮影ではなく)スキャン」が出来るので、絵画やイラストのスキャニングにも使われることが多いのです。
気をつけなければならないこととしては、一般的にコンビニのスキャナーは最高解像度が400dpi程度であり、絵を印刷するクオリティとしては若干不足していることが挙げられます。またコンビニのスキャナーはいわゆる「フラットベッド型」なので、先ほど書いたように原画自体への影響が懸念されます。
スマホから専用スキャナーまで色々な方法がある
以上、水彩画をはじめ絵画作品のスキャン(撮影)方法について解説しました。
「カメラだから、コンビニだから良い(悪い)」ということはなく、どの方法にも一長一短があります。実際弊社でも絵画スキャンのお問合せをいただいた際『それだったらカメラの方が良いかもしれません』と提案させていただくこともあり、どの作品スキャンのケースにも必ず当てはまる最適な方法というものはありません。
ご予算や納期によっても選択肢は限られることでしょう。『一体この場合はどうすればいいのか?』と悩まれた方は、弊社までお気軽にご相談ください。
⇨【「美術手帖」でも紹介!】作品へ触らず高画質なスキャニングが出来るサービスはこちら
水彩画のスキャン よくある質問
Q.水彩画のスキャン方法は?
A.水彩画などの絵画作品をスキャンするには、「絵画専用スキャナーを使う」「フラットベッド型スキャナーを使う」「コンビニの複合機でスキャンする」「一眼レフなどのカメラで撮影する」「スマートフォンのカメラで撮影する」などの方法があります。「絵画専用スキャナー」は機材の種類に応じて「接触型」と「非接触型」に大別されます。
Q.水彩画のスキャンでの注意点は?
A.水彩画のような繊細な色遣いや筆致が特徴の支持体は、スキャナーやカメラの性能、撮影した環境によって生成されるデータに違いが出ます。データの色味が原画と違った場合は、Photoshopなど画像修正ソフト等での修正が必要です。
Q.水彩画のスキャンの費用は?
A.手持ちのスマートフォンを使う場合やコンビニのスキャナーを使用する場合は0円〜100円/枚程度で可能です。業者へ依頼する場合は6,000円程度、フラットベッド型スキャナーを自身で購入するなら30,000~円程度それぞれ発生します。
Q.水彩画をSNSやWebサイトで公開したい時は?
A.作品データをSNS等のプラットフォームで公開する場合は、基本的にはスマートフォンの撮影で十分でしょう。スキャナーや一眼レフなどで超高画質に撮影したとしても、アップロードした段階で画質がダウンコンバートされるため、元データのクオリティをキープすることは一般的に難しいとされています。
Q.水彩画を複製、印刷したい場合は?
A.逆にスキャンデータを複製や印刷出力に使いたい時は、絵画専用スキャナーやスタジオでのカメラ撮影がおすすめ。スマートフォンに比べ費用はかかりますが、印刷しても退職や原画との差異が出にくいデータを生成することが出来ます。