修親刊行事務局様
1950年に朝鮮戦争の勃発を受け組織された警察予備隊。それから保安隊を経て4年後の1954年(昭和29年)に現在の陸上自衛隊が誕生しました。いまや陸上自衛隊は、私たちの日々の安心安全を守るだけでなく、国際平和に貢献する存在として、大きな役割を果たしています。
陸上自衛隊の幹部やOBが会員の修親会連合の機関誌『修親』を半世紀以上にわたって発刊しているのが、今回ご依頼いただいた修親刊行事務局様。
今回、この『修親』の年表を電子化いただいた背景について、修親刊行事務局の加地 信夫様にお話を伺いました。
隊員同士の親睦を深める為に
まず、修親会について教えていただけますか。
加地様:『修親会』は、陸上自衛隊の幹部職やそのOB同士の団結や親睦を目的としている団体で、昭和29年に各駐屯地内で結成されました。現在も全国の陸上自衛隊の駐屯地、それぞれで活動しており、例えば研修や懇親会、更にはゴミ拾いや墓地の清掃といったボランティア活動などを行っています。幹部として勤務している者が会員なので20歳程度の隊員から60歳前までと年齢層には幅があります。
そして各地の修親会を一つに纏めているのが『修親会連合』という組織になるんですが、『修親』は、この修親会連合が発刊する機関誌になります。
『修親』はどういった目的で発行されているのでしょうか?
加地様:昭和33年に創刊された月刊誌で、現在はこの事務局で編集し全国の会員宛に発行しています。
陸上自衛隊は、各地で組織単位での訓練をすることはあるものの、交流や親睦を深める機会はほとんどないんです。『修親』では各修親会や駐屯地の様子、会員やOBの寄稿を掲載しているのですが、これによって「あの部隊はこういう訓練をしているのか」「こういった活動が行われているのか」というふうに自分たちの参考とすることができるんですね。いわば情報を共有するために利用されています。
昭和33年ということは、今年でちょうど60年
加地様:そうです。今年で60年になります。創刊当時は陸上自衛隊内で編集していたものの、次第に本来の職務と並行していくことが難しくなり、部外の組織に刊行業務を委託する等、刊行の組織の変遷が何度かありました。
ただ、平成12年~13年に一時期休刊したことがあるだけで、その他の期間は60年間毎月休まず発刊しています。実は今回年表を電子化したのも、60周年に向けて調べていた中で出てきた話なんです。
この世に1,2冊しかない年表
今回電子化した年表について教えてください。
加地様:修親200号と365号それぞれを発刊した際に作成した年表で、修親会や『修親』について記録された本です。
相当細かいことまで書かれていて、いつどんな委員会が開かれたとか、誰が意見や指示を出したといった当時の活発な動きがそのまま記録されているんですね。例えば創刊時の価格は一冊20円なんですが、その情報もこの年表に書いてあります。これは凄いなぁと(笑)
本当に詳しいことまで書いてあるんですね。
加地様:そうですね。当時の活発な会の動きについて、知りたい経緯が細かく書いてある。ここまで書けば後世困らないだろうと考えて、詳しい情報まで載せたんだと思います。
この年表は何部ほど残っているのですか。
加地様:『修親365号年表』はこの世に2冊、『修親200号年表』は1冊しか存在しません。バックナンバーも、創刊号は複数残っていますが途中抜けている号があります。永久保存で大事にしていても、問合せ対応などの何らかのタイミングでなくなってしまうことがあったようですね。
早くから電子化の必要性を認識
なぜ、今電子化しようと思ったのですか。
加地様:200号は昭和50年、365号は平成2年に制作されたものです。既に傷みが相当出てきていますので、データ化して永久に保存しなければと思い電子化を決めました。
実は電子化自体は7年前から実施していて、創刊号から昨年発行された分までのバックナンバーはデータ化されているんです。ですから今回も電子化するという認識はスムーズに出てきました。
7年前ですか!非常に早い時期からされていますね。
加地様:以前から「昔のこの資料が見たい」という声はよくあったんですが、それまでは閲覧する為に保管している事務局まで来ていただくか、コピーしたものをファックスや郵送で送るという対応をしていました。原本を送るわけにはいかないので…
ただ、既に傷みが激しくなっていましたし、そうした対応の中でなくしてしまわないようにということで電子化をスタートさせました。
それからは閲覧の要望があった際、該当部分のPDFをメールで送るようにしています。
他に電子化して得られたメリットはありますか?
加地様:保存目的もそうですが、どこに何が書いてあるかがすぐ分かるようになりました。
今HPにバックナンバーの目次検索機能があるんですが、こちらは、より目当ての記事を見つけやすくして欲しいという要望があって、その後に作ってもらったものです。
“非破壊”と“信頼性”が重要だった
今回、年表を電子化する上でポイントだった部分は何でしょうか。
加地様:今回の資料は1~2冊しか残っていないので、裁断しない、背表紙を切らないという点が重要でした。信頼性と経費も気になってはいましたね。
何故誠勝をお選びいただいたのでしょうか。
加地様:誠勝さんはインターネットで見つけたんですが、書籍を傷めないタイプのスキャナーを見て、これならそのまま綺麗にスキャンできるのではと思いました。又、公官庁などの実績があったので、セキュリティに関して問題はないだろうとも思い、誠勝さんにお願いしました。
実際に利用されていかがでしたか。
加地様:非常にスムーズに進みましたし、データも綺麗に仕上がっていたので良かったです。以前お願いしていた業者さんは、一度裁断してスキャン後に再製本していたんです。今回はスキャナーが書籍を傷つけないものでしたし、全体を通して「あそこはこうして欲しかった」という部分はありませんでしたね。
電子化で次の担当者にも繋いでいく
今後も電子化していく流れは続きますか。
加地様:修親会の事務局は、概ね10年程度で人が変わっていくんです。また各駐屯地の修親会の担当者も2,3年で変わっていきます。それが続いていくとだんだん過去が分からなくなって、会員から質問を受けても答えられなくなってしまう。
会の経緯などは最終的に事務局が頼りになりますから、その為に今回のような過去の貴重資料は永久保存していくべきだと考えています。
記念誌や年表は今後も作っていくのでしょうか?
加地様:実は現在、60周年の記念誌を作成しています。過去の資料がないとそれも非常に大変なので、眠っている資料があればまたお願いしようかと思います。
ありがとうございました!