株式会社絵本ナビ様
株式会社絵本ナビ様が運営する「絵本ナビ」は、絵本に関するあらゆるコンテンツを17年以上に渡って提供し続けてきたWebサイト。創業者・金柿秀幸様がご自身の子育て経験をきっかけに「『幸せな時間』を応援する」というコンセプトで開設し、現在では年間1,000万人以上が訪問(※2019年6月現在)する日本最大級の絵本情報サイトとして、多くの方に利用されています。中でも「全ページためしよみ」は、人気のサービスです。
そのままスキャンでは、同サイトで公開されている「全ページためしよみ」用の絵本の非破壊電子化・e-book作成を約10か月間に渡り承っております。
絵本が持つ書籍としての独自性、「絵本ナビ」の魅力、そして電子化をめぐるお話について、同社 取締役の奥平亨様、出版プロモーション事業部 コンテンツディレクターの掛川晶子様に伺いました。
「絵本ナビ」2つの独自コンテンツ
「絵本ナビ」について教えてください。
奥平様:「絵本ナビ」は、年間の利用者数が1,000万人を超える日本最大級の絵本情報サイトです。
絵本は他の一般書籍とは少し異なり、「(基本的には)自分のものでなく、お子様のために購入する」、そして「気に入った本は何回でも読み直す」という二つの特徴があります。ですから絵本を買う人は「子どもにこの絵を見せて大丈夫かな」「気に入ってくれるかな」というようなことを気にしながら、非常に慎重に選ぶことになります。すると必然的に、中身の情報を深く知りたいと思う。
「絵本ナビ」は、そんなご要望にずっとお応えしてきました。独自コンテンツとしてあるのが、読んだ子どもの年齢や実際に読んだ時の反応を書くことができる、絵本選びに役立つ「ユーザーレビュー」です。どのシーンでどんな反応をしたか、といった情報がしっかり書かれているので、「この本はうちの子に合うな」ということが、より深く分かる。実は「絵本ナビ」は元々レビューから始まったサイトで、この18年間で約37万件ものレビューが投稿されています。また、絵本ナビ編集部による絵本のみどころ紹介やおすすめ絵本を紹介する記事、絵本作家さんのインタビューなど、絵本に関するたくさんのコンテンツを毎日更新しています。
もう一つが、誠勝さんにデータ作成をお願いしている「全ページためしよみ」です。お子様に絵本を買いたいと思っている方にとって、「立ち読み」は究極の情報なんですね。それをWeb上で実現したコンテンツになります。
掛川様:小さいお子さんを連れて書店で絵本を探しに行く、買いに行く、というのはなかなか難しいですし、近所に書店がない地域もあります。その点ネットで購入する際に中身が見られる、というのは便利なものとして受け入れていただいていると思います。
奥平様:レビューがたくさん載っており試し読みで中身も見られるので、絵本選びの上で非常に重要な情報が載っている、その意味で多くの方にご利用いただいているサイトになっています。
単なる絵本の通販サイトではない。
奥平様:絵本関係のことは網羅したいと思っています。まだ足りない部分はありますが、絵本や作品、その周辺を知りたくなったら「絵本ナビ」をご利用いただければ色々な情報が手に入る。そして、気に入った絵本はそのまま購入もできる。そういう情報&販売サイトですね。
単なる「通販サイトではない」というのは大きなポイントで、通常通販サイトさんでは「早く届いた」「包装が綺麗だった」という購入時や配送のレビューも含まれるところ、「絵本ナビ」は純粋な内容の感想が37万件ある。ロングセラー作品が多い絵本の世界では、10年前のレビューでも全然古びないんです。そうしたところがユニークで、同時にそこに強みがあると考えています。
「全ページためしよみ」の役割とは
「全ページためしよみ」についてお聞かせいただけますか。
奥平様:「絵本ナビ」掲載作品のうち2,300タイトル以上を、ご登録いただいた会員の方に、無料で1回だけ、サイト上で全ページ試し読みいただけるコンテンツです。
先ほども言ったように、絵本は何度も読み返すものです。ビジネス書などの一般的な本だと、中の情報を取得したらもう終わり、買わないということになるかも知れませんが、絵本は情報を得ることによって、むしろ購買意欲が増すという仮説が私たちの中である。その考えから全ページを公開しています。全ページためしよみサービスの導入時のトライアル企画では、実際それによって平均4倍、タイトルによっては十数倍売り上げが伸びたという結果が得られました。
全ページを見てもらうことで本の中身の認知につながる。書店さんが減っている今、絵本ナビの役割はそういう意味で大きくなっていると感じています。
掛川様:「全ページためしよみ」の企画がスタートした当初は、作品の全ページを公開することに抵抗がある出版社様も多かったです。それは当然だと思います。でも全ページを公開する目的があくまでも絵本を購入する手助けのためだということを理解いただけるようになり、今では出版社様にも喜んでいただけるサービスになりました。
絵本専門の情報サイトとして、絵本をできる限りそのままの美しさで魅力を伝えられる「ためしよみ」を作ることにはとてもこだわっています。その結果として、作家様や出版社様、読者の方の信頼を得ていった部分もあるので、その点はずっと大事にしていきたいと思っています。
「ためしよみ」にe-bookを導入している理由は何でしょう。
奥平様:弊社は電子書籍を提供しているのではなく、紙の本を世の中に流通させるお手伝いをしています。
絵本という媒体の特性はお子様に読ませるといったことにありますが、小さいお子様の場合、話の理解に先立って「刺激を受ける」「めくる」という行為、極端に言えば「破る」「舐める」ということまで大事な経験になる。また、親と子をつなぐコミュニケーションツールにもなります。これができるのは、やはり紙なんですね。
だからダウンロード等ができるPDFや電子書籍ではなく、あくまでコンテンツとしてサイトの中で閲覧できるという点、そして実際の本の感覚にできるだけ近いものを、という思いからページをめくる形式のe-bookを選びました。
弊社にご依頼いただく前、データ化はどうされていましたか?
奥平様:最初はスキャニングを社内でやっていたんです。ただ段々掲載する絵本のボリュームが増え、流石に難しくなってきた。そんな時、ある会社様と自治体が立ち上げた母親支援事業の話がありまして、その事業所様にスキャニングをお願いしてきました。ただ、そこも事業方針が変更となり、継続してお願いができなくなりましたので、急遽代替業者を探さなければならないという事態になりました。
掛川様:絵本は「文字が読めればいい」タイプの本とは違って、絵がきちんと伝わらないとためし読みが成り立ちません。その事業所様には非常に綺麗なスキャンをしていただいてはいましたが、色の違いや画像の傾きといった仕様のやり取りはかなりさせていただいていましたね。色は少し違うだけで全体の印象まで大きく変わってしまいますので、微妙な調整を何度も繰り返しお願いしたこともありました。
信頼で成り立つサービスだから、信頼で選んだ
色の再現が非常に重要なのですね。
掛川様:そこはどうしても譲れないところだったので、誠勝さんと最初に打ち合わせした時は安心しました。「こういう色味はスキャンすると出にくい」など、最初から言わなくてもわかっていただけたので。
奥平様:スキャンだと、やはり原本の色味を100%再現することは難しい。「この色は薄くなるけど、その分こっちを再現する方が大事」といったように、作品によってどの部分を優先するかという課題がありますが、そうした話ができることがとてもありがたいなと思います。
そもそも誠勝さんを選ばせていただいたのは、古文書や学術系のアーカイブをやられているので、そうした繊細なもの、大切なものを手掛けていることへの信頼感を非常に感じられたことが理由としてあります。
弊社も信頼を基に「絵本ナビ」をやらせていただいているので、それを壊してしまうパートナーにはお願いできません。その意味で御社は「コンテンツを非常に大切にしている」企業だな、と思っています。
依頼される上で重視されたのは、値段よりも信頼感だったということでしょうか。
奥平様:そうですね。ただ価格も十分にリーズナブルと思っていますし、現実にはスキャニングの単価以外にも、納品データのチェックといった「オペレーションコスト」や、先ほど掛川の話したクオリティを維持することに腐心するストレスがあり得る。誠勝さんはそこに余計なコストが発生しないので、非常に助かっていますね。
掛川様:絵本と言っても大きさ・種類はバラバラですし、開いたら中身が飛び出すような「仕掛け絵本」のようなページもあります。そういったものまで丁寧にご対応いただけるのは本当にありがたいです。出版社様から提供いただいた絵本なので、本にダメージを与えずに電子化できることはとても大きいです。スキャン後も資料として保存し、紹介する本として今後も活用したいと思っています。
奥平様:データだと原本がどんな大きさでも同じサイズになりますが、紙だと「仕掛け」のようなインパクトも含めて違う。絵本は本当に装丁まで表現ですので、やはり実際の絵本を手に取ってほしい。
私たちの立ち位置は、そうした紙の本が世の中に流通するお手伝いをしていくという点にある。だから御社に作っていただくデータは、とても大事なものなのです。