三井製糖株式会社様
スーパーマーケットで、食卓で、調理場で…。“スプーン印”のお砂糖を目にしたことの無い方はいないのではないでしょうか。三井製糖株式会社様は、質の高い砂糖製品で日本の食生活に長く寄り添ってこられました。そのビジネスは現在、アジア各国にまで拡大しています。
同社のお砂糖の歴史は1900年の台湾製糖設立にまで遡ります。そこから100余年後の現在に至るまで培ってこられたお砂糖と同社の情報は膨大な資料として保管され、社内で大切に引き継がれてきました。
そのままスキャンでは、その内の貴重書籍3冊を電子化・OCR処理させていただきました。書籍を巡るストーリーと電子化した理由、そのご活用方法について、ご依頼いただいた研究開発部 研究課 塩見和世様、藤井沙代子様にお話を伺います。
“お砂糖のデータベース”を作る為に
今回電子化した書籍について教えていただけますか。
塩見様:誠勝さんに電子化していただいたのは、書庫に保管されていた『精製糖工場に働く者の基礎知識』『三井製糖20年史』『台糖90年通史』の三冊です。『精製糖工場…』は主に工場で製糖に携わる人が読むもので、工場での製造やお砂糖の分析方法などが載っている本になります。工場用にはマニュアルが別に存在するのですが、この本は少し変わったものを分析する際など、立ち戻る為の“辞書”のような形で使われていますね。初版は1979年(昭和54年)ですが、大規模な改訂もなく、作成された当時の情報がほぼそのまま残っています。
社史は、それぞれ1991年(平成3年)と90年(平成2年)に作成されたものになります。ケースに入れて保存されていたので状態は綺麗ですが、各部署にはあっても全員分は無い資料です。弊社は合併しているので(注:三井製糖株式会社様は2005年に新三井製糖株式会社、台糖株式会社、株式会社ケイ・エスの三社が合併)、合併前の社史の在庫が少なくなっていたりもするんですね。あまり使う場面が無いので、いざという時に『あれ、どこにあったかな?』となる恐れがありました。私たち研究開発部も知らない事が載っている書籍です。
何故、研究部門のお二人が社史の電子化を担当されたのですか?
塩見様:これまで蓄積してきた過去の分析データや砂糖に関する書籍・資料を社内で共有出来るようする為、今年の2月に研究開発部で『お砂糖DB』という社内用のデータベースを立ち上げました。その社内への案内の時に『こういう本も電子化して欲しい』という要望が他部署から次々と出てきたんですね。社史はその一つになります。
藤井様:何か調べたいことがあったとき、分厚い本を調べるのは面倒ですし、他部署の方はわざわざ研究開発部まで来てコピーして対応しなければなりませんでした。また、よく見ている方だと『どの本のどの辺りに載っているか』が分かるんですが、新入社員などは『この本を調べて』と言われても難しい。
ですから、電子化とOCR処理をすれば自分のPC上で全文検索が出来るようになる、それが大きいですね。原本を見るよりも早く自分の探しているものにたどり着けるならと、あれもこれもと社内から要望が出てきました。
『お砂糖DB』はどんなときに使われているのですか。
藤井様:このデータベースには、社員みんなが共有した方がいいという情報全般がアップロードされています。
例えば営業から『これとこれの違いをお客様へ科学的に説明したい』と言われたり、お客様の電話でのお問い合わせに対応する部署が“お客様が納得できる分かりやすい情報”を必要とする、そういった時に役立つんですね。他にもお砂糖の作り方を調べるときや、雑誌に記事を書かなければならないとき、弊社が昔どうだったかといった広報対応の際等、活用のシーンは全社的なものになっています。
研究開発部で作りはしましたが、決してここだけで使うものではなく、それこそ管理部門から工場までシェアした方がいい情報がDBにはあります。
予算内で非破壊電子化+OCR処理…どうする?
今回電子化を依頼される際、ポイントとなったのは?
塩見様:コスト面と説明が丁寧で対応が速かったところです。
以前にも別の業者さんに電子化とOCR処理をお願いしたことがあったんですが、今回『台糖90年通史』『三井製糖20年史』に関しては非破壊でやっていただく必要があり、一度にお願いするのは予算的に難しい状況でした。誠勝さんは非破壊スキャニングのお値段が安かったので、進めない理由はないと、上司に確認してすぐに進みましたね。
安価と知った上で、品質へのご懸念はありませんでしたか?
塩見様:実はちょっとありました。解像度によってコストが変わると聞いていたので。
藤井様:解像度次第でOCR処理を掛けた後の検索ワードがしっかり引っかかってくれるかが心配でした。電子化出来ても検索が出来なければ意味がありません。毎日使う訳では無いので、もしかしたら検索出来ないワードがあることに気づくのが10年後になるかも知れない。ですので、最初は解像度を400dpiにしようと思っていました。
ただ誠勝さんに書籍を見ていただき、写真を綺麗に、ではなく活字をしっかり認識することが大事なので問題はないとのお話を聞き、結局300dpiでお願いさせていただきました。
塩見様:研究開発部としては経験がありますが、私たちにとっては初めての電子化代行でした。だから非破壊スキャンやOCR処理といったものが分からず手探りの状態だったんです。そんなとき誠勝さんに来ていただき、分からない所を色々丁寧に教えてもらえたのはとても良かったですね。
納品データはPDFでしたね。
塩見様:はい。今はPDFが『お砂糖DB』へアップロードされており、他の書籍同様社員のPCから閲覧したり中を検索出来るようにしています。
活用してお困りの点はありましたか?
塩見様:品質的には問題無いと思います。
ただ校正を付けなかったので、旧字のワードを検索するのは少し厳しかったかなという印象で、一つだけ、違う文字として認識されてどうしても検索に引っかからない字があったんですよね。ただ誠勝さんに問合せたらすぐご説明いただきましたし、今のところ他のワードは大丈夫でした。
電子化の波を全社に
電子化のメリットはどんな所に感じていますか?
塩見様:紙をなるべく使わないという全社的な命令があるので、そういう意味ではエコですよね。一方、紙や本を電子化したという話は、これまであまり社内で聞いたことがありませんでした。
藤井様:書籍を電子化して共有したいという声は散発的に元々あったと思いますが、それがDBの説明会を開いたことで実際に出たんだと思います。電子化でどういうことが出来るようになるのか、本をどんな風に見ることが出来るのかが社内に知れ渡ったことには大きな意味があると思いますね。今後に向けた新しい取り組みの一つになると考えています。
今後も電子化する予定の書籍はありますか。
塩見様:社史でも30年史など、まだ電子化していない書籍はあります。また社内から要望があれば、お願いしたいと思っています。