株式会社船場様
戦前に栗山四郎氏が大阪で開業した「栗山ガラス店」からその歴史が始まった、株式会社船場さま。半世紀以上にわたって「商環境」創造の最先端であり続ける同社がクライアントに向けて発行している研究情報誌が「COMMUNION(コミュニオン)」です。
今回そのままスキャンでは、長年に及ぶ商環境研究が蓄積された「COMMUNION」創刊号から146号までの実本を非破壊で電子化・OCR処理させていただきました。
「COMMUNION」の重要性、電子化した理由、データの活用方法について、株式会社船場 経営企画部 コーポレートコミュニケーション室 課長の小山泰幸様、同室 中田倫未様にお話を伺いました。
42年間のナレッジを共有するには
今回ご依頼いただいた資料は、どのようなものでしょうか?
小山様:船場グループはショッピングセンター・百貨店などの大型施設から、書店やライフスタイルショップといった専門店、カフェ・レストラン、レジャー&アミューズメント施設、病院などの医療施設まで幅広い分野の空間創造を手掛けています。
今回電子化をお願い致しました「COMMUNION」は弊社が1977年の創刊以来、42年間153号にわたり、国内・海外の商業施設の動向から環境問題、立地論まで、毎号一つのテーマに沿って、さまざまな角度から情報発信を行っております。執筆に当たっては当社社員の他、内外の専門家を招聘し、お客様にとって有益な情報発信媒体です。
なぜ、電子化をご検討されたのでしょうか。
中田様:これまで実本保存をしていたのですが、どうしても経年劣化のリスクがあり、またこれまでの様々なリサーチや研究実績をバックナンバーとして、クライアント様はもちろん弊社グループ社員にもこれまで積み重ねてきた商環境に関する情報、知識の共有をしたいと考えたため、電子化にふみきりました。
劣化防止だけでなく、情報と知識の共有も重要な目的だったと。
小山様:ショッピングセンター(以下、SC)に関する歴史、例えば昔の成功事例などを紐解き社内で共有することは、お客様へ知識を持って提案できるという点でも非常に大切な事だと考えています。
ただし現存するものが一冊のみの号もあるので、紙で保管していたものが、万が一手元から離れてしまうと貴重な情報が失われてしまう恐れもある。
電子化をすることで、まず社員に周知させることが可能になりますし、お客様に対しても、我々のデータベースをオープンにすることで「42年間こういった研究をしてきた結果として、今のプランニングが提案できる」ということを明確にできるんですね。
御社にとって、この上ない情報が詰まったものですね。
小山様:例えば、SCの開発においてはアメリカが世界をリードしてきましたが、歴史を見ると失敗例もあります。そのアメリカを含む国内外SCの歴史を紐解き、成功と失敗のそれぞれが分かると非常に強みになりますから、昔の号を見てもとても勉強になるんですね。
また、簡単なマーケティング数値などの「薄い情報」は様々なところで拾えます。ただ、市場の生の声といった、本当にクライアント様が「知りたい情報」を見つけられる媒体はなかなかない。数十年前の号の「将来の消費者動向はこうなる」という予測が当たっているなど、「COMMUNION」は昔から研究して作られてきたことが分かります。
実本はどのように保管されていましたか?
中田様:倉庫で保管していたのですが、実は残り一冊しか残っていないという号が非常に多く、データも残っているのはごく一部でした。
最新号をお客様へお渡しすることはあっても創刊号などを参照する機会は無く、社内でもバックナンバーまで意識しきれない、しっかり管理することが難しかったと思います。
倉庫では事務用のファイルボックスに入れていました。発刊する中で少しずつ大きさや厚さが変わっていて、創刊号と最新号を比べるとかなり違うことが分かりますが、その創刊号はページが取れそうになっている部分もあります。このまま使うと…と考えると、心配ですね。
「短納期」だから「丁寧な仕事」が必要
このタイミングで電子化を検討された、きっかけは?
小山様:年に一度開催されるSC業界最大の展示会「SCビジネスフェア」に弊社は毎年出展しておりまして、今年は「COMMUNION」をコンセプトにしたブースを企画しました。
通常出展する企業は自社の実績をPRすることが多いのですが、先ほども言ったように我々には「積み重ねた歴史」がバックボーンとして存在する。そこで、電子化した「COMMUNION」からインパクトが強い記事を抜粋し、150枚以上のアクリルや壁面に加工してブース全体を構築することに致しました。42年前から現代に向かって、当社発展の歴史をタイムスリップのような感覚で展示させていただいたんです(下写真)。
まるで博物館の様ですね。データがこのように使用されるとは思いませんでした。
中田様:企画からデザインまで、すべて社内で考えました。電子化した「COMMUNION」からデータを抜き、拡大や色の付け直しなどをしてアクリルや壁面にデザインしています。データをただ見せる、ではなく、今回重要だったのはデータからディスプレイの形にすることでした。
ご依頼される際の状況を教えていただけますか。
小山様:今回大切だったのは納期、そして正確な仕事をしてくれるかどうかでした。
展示会が1月下旬の開催だったのですが、誠勝さんにお願いしたのが前年末頃で、納期がとても厳しかったのですね。スキャニング後、納品データから抜粋したページを壁面のグラフィックに加工するなど様々な作業があったので、弊社でも少し焦っていました。
納期が短いと、データをチェックしてミスを指摘する時間がありませんでしたし、スキャニングに失敗してやり直しするということもできません。
納期が短いからこそ、正確・誠実な会社さんにお願いすることが必要だと考えていたのです。
ありがとうございます。非破壊スキャンを選ばれた理由はなんでしょうか。
中田様:残り1冊しかないという号が非常に多かったので、裁断して電子化する業者さんも知ってはいましたが、やはりこういった状況だと難しいという話になりまして。これからの会社の為にも、念の為実本はそのままの形で手元に取っておきたいと考えていました。
実本は保管し、データを共有活用したい
納品データをご覧になっていかがでしたか?
中田様:展示会の企画が決定し、御社へ相談後、発注となったわけですが、非常に短い納期の中で、確実に丁寧に納品いただいたと満足しております。
小山様:私たちも多くの電子化業者を知っているわけではありませんでしたから、いくら「信頼できる」「破壊しないでスキャン」と言われても実本が少ない中で書籍を預けるのは心配でした。でも、誠勝さんは想像通りのクオリティに仕上げていただいて良かったです。
嬉しい誤算だったのはOCR処理でした。
今回の展示はもちろん「電子化で文字情報が残る」ということは、データ内を検索する際などで非常に大きな利点となります。当初は処理の仕組みや何が可能になるのか、といったことがよく分からなかったのですが、実際にそれを見て「すごいな」と思いました。
今後は原本ではなく、データを活用する予定でしょうか?
小山様:そうですね。現在原本は社内で保管し、基本的には参照しないようにしています。
データについてはバックナンバーを社内で共有できる仕組みを現在考案中です。何号を見せて欲しい、使いたいという要望がある際にPDFデータを共有できるようにしたいと考えています。
●株式会社船場:https://www.semba1008.co.jp