お客様インタビュー Vol.07 公益財団法人 吉田秀雄記念事業財団様

半世紀以上続く事業を、次世代に引き継ぐ第一歩

日本の広告・マーケティングの近代化に尽力した株式会社電通第4代社長・吉田秀雄氏の功績を称え、1965年に創設された公益財団法人 吉田秀雄記念事業財団 様。吉田秀雄氏は生前、広告・マーケティング理論と技術の普及・発展が、日本経済の発展と広告の社会的地位向上に欠かせないという信念のもと、広告取引の適正化やテレビ視聴率の調査手法の確立など、さまざまな事業に取り組みました。

吉田秀雄記念事業財団 様は、吉田氏の遺志と情熱を引き継ぎ、創設以来半世紀以上にわたり、広告やマーケティング理論の研究者に対する助成や委託、優れた研究への褒賞、広告関連資料や文献の収集を継続されています。


同財団が運営し、2017年12月にリニューアルオープンしたばかりの「アドミュージアム東京」で、司書の吉野 由麗 様、研究助成担当の沓掛 涼香 様にお話を伺いました。

マーケティング理論と広告コミュニケーションの発展に寄与

Q, 財団の位置づけについて教えてください。

沓掛様:

電通の第4代社長で、中興の祖として知られる吉田秀雄氏は、広告の近代化、マーケティングの普及と発展に尽力した人物です。社長在任中の1963年に志半ばで病に倒れ死去し、2年後にその遺志を引き継ぐため当財団が設立されました。

館内の展示モニター

「広告は、科学であり、芸術である。」

という吉田氏の信念に基づき、当財団では広告を中心とするマーケティング領域の研究助成や広告資料・文献の収集、そして広告に対する社会的理解の向上を目指す広告ミュージアム「アドミュージアム東京」の運営をしています。

唯一無二の資料を活かし、後世につなぐ。

Q, 今回電子化された資料は?

吉野様:

当財団では毎年、10-15件程度のマーケティング分野の研究を支援・助成していますが、その成果は論文や報告書、出版物として提出いただき、すべてアドミュージアム東京内に設置されたライブラリーで公開しています。今回誠勝さんに電子化をお願いしたのは、この一部です。特に報告書は、昭和42年(1967年)から(データで提出されるようになる前の)2000年ごろまでの約30年分で、1年分が段ボール1箱に収められているので、けっこうな量でしたね。

今回電子化した資料

報告書は永久保存するため、これまですべて2部ずつ保管していましたが、年次を重ねてゆく事業なので年々増えていきますし、外部倉庫に預けるにしても費用がかかるため、長年課題の一つとなっていました。「アドミュージアム東京」のリニューアルに伴い、ライブラリーの書架容量が減少すること、資料の公開方法なども変わることが決まり、電子化に踏み切りました。


報告書には手書きのものもあれば、ワープロ打ちのものもあります。青焼きは徐々に 文字が消えてゆきますし、鉛筆書きの文字は擦れて読みにくくなってゆきます。判型も違えば、写真や大判の資料が折り込まれているものもありました。


これらの報告書はあくまで財団が研究助成した成果を財団に提出いただくものなので、基本的には一般の書籍や雑誌と違って流通するものではありません。そのため私たちが紛失したり廃棄してしまうと、世の中からなくなってしまうものです。

沓掛様:

広告は、社会状況を色濃く反映するものです。1つ1つに資料としての価値もありますが、こうして一貫したテーマで資料が集まっていることにより、広告・マーケティングの歴史や研究者の興味関心の変遷を知るうえでの、資料群としての価値もあると考えています。


また、広告・マーケティング領域に特化して助成しているのは国内では当財団だけなので、これまでも多くの先生方の研究を支援しており、結果的に先導的な研究も集まっています。こうした研究は、次に続く研究者に活用していただくことに価値があるので、これまでも図書館同士の相互間貸出には対応していましたが、さらなる活用も課題でした。

現在開架されている資料。

あらゆるタイプの報告書を電子化出来るか

Q, 誠勝にお声がけいただいた経緯は?

吉野様:

実はいままで取引のあった会社にも相談したのですが、予算的に見合わなかったことから、あらためてネットで検索し、誠勝さんにお声がけしました。省庁や大学などの実績があるということも安心材料でしたが、決め手になったのは、手置きでのスキャンにも対応いただけることでした。さまざまなタイプの報告書があるため、一つ一つ丁寧にスキャンの方法を検討する必要があったのです。


誠勝さんからは事前にサンプルデータを提示いただき、「このようなクオリティになります」ということが確認できたので、安心してお願いできました。


また、報告書の一部は断裁にて電子化しましたが、代々の担当者が2部ずつ保存してきたので、思い切って踏み切ることができました。断裁後は、シュレッダーではなく溶解で処分いただきました。

Q, 電子化したデータはどのように活用されていますか?

沓掛様:

現在はPDFデータを財団内の複数のサーバーに保管し、職員はパソコンで閲覧ができるようにしています。これまではライブラリーや倉庫から現物を持ち出す必要があったので、ずいぶん効率化されたと思います。また論文の年次、研究者名などの情報をファイル名に付与した形で納品いただいたので、検索がしやすくなりました。

吉野様:

資料や書類の管理基準に「現用かどうか」という考え方がありますが、当財団にとって、研究助成事業の成果物はすべて永久的に現用するものです。今回の電子化によって、保管場所や費用の課題をクリアしながら「永続的な保管」へ対応できたことに満足していますし、次の世代へ引き継ぐ第一歩が踏み出せてホッとしています。 ただ、どんなにデジタルデータが進歩しても、一次資料としての「紙」に勝るものはないと感じているので、今後は紙とPDFデータを併用した保管体制を進めていきます。

研究者から一般の方まで広告のことを知ってほしい

Q, 今後はどのようなご活用を検討されていますか?

沓掛様:

著作権などの課題もあるため、現状ではネットでの一般公開は難しいですが、ライブラリーで検索・閲覧できる環境を検討できればと思っています。

吉野様:

ライブラリーでは現在、直近15年分の報告書を書架に並べていますが、これが精一杯です。これ以前の報告書は外部倉庫からの取り寄せとなり、閲覧までに数日を要します。一本の報告書を目的に遠方から来館する研究者もいるので、今後は電子化したデータを活用できればと考えています。
また、従来から行っている相互間貸出しへの活用も検討中です。これまでは報告書の現物を貸し出ししていましたが、運営上煩雑なこともありました。そうした手間の軽減にもつなげられるのではと考えています。


学術研究の支援と、ミュージアムの運営は、財団の活動の両輪です。今後も財団の活動を通じ、広告・マーケティング理論の発展ともに、広く一般の皆様にも広告のことをより知っていただくことに貢献ができればと思います。

アドミュージアム外観

公益財団法人 吉田秀雄記念事業財団(http://www.yhmf.jp/index.html
東京都中央区銀座7-4-17 電通銀座ビル 4F


アドミュージアム東京(http://www.admt.jp/
東京都港区東新橋1-8-2 カレッタ汐留
入場料:無料
開館時間:火~土 11:00~18:00
休館日:日、月