近年聞かれるようになったパーパス経営というビジネス用語。SDGsやESG投資など、企業の社会的な使命に関係したワードの一つですが、前者2つと違って社内的にも大きな意味のある概念です。
今回は、パーパス経営の意味、メリットや注意点、事例について解説していきます。
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Table of Contents
パーパス経営とは?
「パーパス経営」とは、企業の存在意義や社会的意義とも言い換えられるもので、企業や組織が単に利益追求だけでなく、より大きな社会的な目的や価値を追求する経営のアプローチを指す用語です。
単なる収益最大化だけではなく、社会や環境に対する責任や影響を考慮しつつ、企業がどのように活動し社会に貢献していくのかを基軸にした経営を指します。
ビジョン、ミッションとの違いは?
似たような概念に「ビジョン(Vision)」「ミッション(Mission)」があり、こちらの方が馴染みがあるかも知れません。しかしパーパス経営はビジョン・ミッションとは少し異なります。
ビジョン
ビジョンとは、企業が社会や環境に対してどのような影響を持ちたいか、将来の目指す状態や目標を示すものです。つまり『(この会社は)何を達成したいのか』『どんな存在でありたいのか』という、比較的長期的な展望を表しています。
ミッション
ビジョンが長期的な展望ならば、ミッションはより具体的な企業活動や行動、戦略に焦点を当てたものです。
まとめると、ビジョン・ミッションはどちらかといえば「どんな企業でありたいか」を表しているものである一方、パーパス経営はより社会への貢献、社会的な価値を目指す考え方と言えます。「パーパス経営を実現するためにはビジョン・ミッションが一つの基盤になる」と言い換えることが出来るかも知れません。
パーパス経営の意味について理解したところで、何故この概念が現在注目されているのかを説明します。
パーパス経営が注目されている背景
近年パーパス経営が注目されている理由は、大きく4つに分けることが出来ます。
社会的関心が高まっている
2015年に国連サミットにて採択されて以来SDGsが話題となっているように、環境問題などの社会問題ががますます重要視され、企業にもその責任が求められています。人々は企業に対して、利益追求だけでなく社会的な影響や貢献を考えるよう求める傾向があります。
パーパス経営は、企業がこうした社会的な使命を果たす一環としてこれらの課題へアプローチする方法として注目されているのです。
消費者の選択と影響
消費者が、自身の購入する商品やその企業を選ぶ上で社会的課題の解決を考慮することを「エシカル消費」と呼びます。エシカル消費への意識は年々高まり続けており、SNSの普及で情報が簡単に手に入るようになった今、消費者は企業の倫理的な振る舞いにますます注視するようになりました。
このように消費者の意識が高まり、製品やサービスの選択において社会的な影響が重要な要素となっています。企業がパーパス経営を採用すれば、消費者はより良い社会への貢献を支援する手段として、パーパス経営を基軸としている企業を選ぶ可能性が高まるでしょう。
従業員の関与とモチベーション向上のため
従業員が仕事を選ぶ基準は単なる給与や職務だけではありません。企業の目的や価値に共感し、社会的に意義のある仕事に携わりたいと望む傾向もあります。パーパス経営を採用することで、従業員の関与やモチベーションが向上し、企業内の協力や自発性・創造性が促進されエンゲージメントも高まることになるでしょう。
投資家の関心
顧客・従業員と来れば当然投資家もパーパス経営の影響を受けます。
環境・社会・ガバナンスを重要視した投資である「ESG投資」が浸透しているように、企業の社会的な影響や持続可能性への取り組みを評価する際に、パーパス経営の取り組みを重視する傾向があります。企業が社会的な課題に貢献することを通じ、長期的な価値を創出しすれば、投資家としてもリスクが軽減されると判断されやすくなります。
パーパス経営のメリット
このように、会社内外の様々な方面と深く関係しているのがパーパス経営なのです。しかしいくら注目されているとはいえ、企業にとってメリットが無ければ目指す意義を見出すことは難しいでしょう。
パーパス経営を実践すると、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?
長期的な成長が期待出来る
パーパス経営を採用する企業は、社会的な使命や価値を追求することを重視するため、単なる収益だけでなく、社会や環境に対する持続可能な価値を創造します。これにより企業は長期的な視点での事業戦略を採用することになり、結果として競争力を高めることができます。
顧客・消費者へのアピールになる
消費者は、社会的な責任を果たす企業のサービスに魅力を感じる傾向があります。パーパス経営を実践することで、企業は消費者からの支持を集め、マーケティングの浸透やブランド価値の向上をさせることが出来るでしょう。
従業員のエンゲージメントとモチベーションアップに繋がる
パーパス経営は、従業員に対して自らの仕事の意義、それが社会へどのように貢献しているかへの実感を提供するため、従業員のエンゲージメントとモチベーションを高める助けとなります。従業員が企業の社会的な存在意義に共感し、自身の仕事に誇りを持つことが促進されれば、より高いパフォーマンスを発揮することが出来るでしょう。
投資家との関係強化に繋がる
パーパス経営は、投資家や資金提供者との関係を強化することにもなります。社会的な価値の提供や社会貢献を重視する企業は、先述したESG投資の概念からも投資家からのサポートを受けやすくなるでしょう。
競合他社に対し優位になれる
パーパス経営は策定した企業に競争優位性をもたらすことにも繋がります。社会的な使命や価値の達成に焦点を当てることで自社の独自性や市場における差別化を強調すれば、よりユニークネスを保つことに成功するでしょう。ユニークネスを発揮すればメディアにも取り上げられやすくなり、ますます競合に対して優位に働くことが出来るでしょう。
パーパス経営の注意点は?
良いことずくめに見えるパーパス経営ですが、取り組む上で気をつけなければならない点がいくつかあります。
確実なコミットメントが必要
ここまで読んだ方の中には、パーパス経営の実践が単なるイメージやマーケティングの手段として見えるかも知れません。実際そのような側面は大いにあると言えます。
しかしパーパス経営は「言いっぱなし」ではなく、会社を挙げた真のコミットメントが必要です。組織全体が社会的な使命や価値に共感し、それを具体的な戦略などの行動に移すことが重要となります。
いくら『我が社は次のようなミッションとビジョンを策定し、企業としてパーパス経営を軸とした活動をしていきます』と言っても、その実旧態依然とした事業展開をしていては消費者も離れるでしょう。
透明性と誠実さが求められる
パーパス経営は透明性と誠実さが求められます。つまり、企業の行動や取り組みが社会的な使命と一致していることを示すことが重要です。企業のCSR活動をステークホルダーへ開示する為に「CSRレポート」があるように、パーパス経営でも具体的な取り組みやエビデンスについて情報発信・開示を行うことが必要となります。
ステークホルダーへの影響を考慮する
パーパス経営は、従業員、消費者、サプライヤー、地域コミュニティなど、様々なステークホルダーとの関与を重視します。これらのステークホルダーとのコミュニケーションを強化し、彼らのニーズや期待に応える努力が必要となります。
例えば、より社会的影響を考慮した結果として商品の原材料が高くなった場合、その差額をパートナーや消費者へ転化するケースが考えられます。しかし何の説明も無ければそれぞれの不満を招くことになるでしょう。パーパスを追求した戦略が各種ステークホルダーにどのような影響を及ぼすことになるのか、事前に考慮する必要があります。
測定と評価を忘れずに
随時、パーパス経営の進捗状況を評価し、適切な指標やメトリックスを設定して成果を測定する仕組みを確立することが重要です。各ステークホルダーから『本当にこの会社はパーパス経営を実践しているのか?』と疑問を持たれないよう、客観的に測定評価出来る仕組みを作りましょう。
バランスの取れたアプローチが必要
パーパス経営では社会的な使命を重視するため、イメージアップに繋がる一方、企業の健全な経営も確保する必要があります。社会的意義と企業としての成長という難しいバランスを取り、かつそれぞれの結果を両立させるアプローチが必要です。
パーパス経営を進めるには?
パーパス経営のメリットとデメリットを理解したところで、具体的な進め方を解説していきます。
ビジョンとミッションの確立
パーパス経営の基盤となるビジョンとミッションを明確に定義しましょう。企業の理念や価値観を反映させながら、社会的な使命を策定します。この段階は必須ではありませんが、ビジョン・ミッションを策定することで企業のパーパスをより分かりやすくすることが出来るでしょう。
ステークホルダーの調査と分析
従業員、顧客、サプライヤー、パートナー、株主など、関係するステークホルダーを対象とした調査分析を行いましょう。分析手法としては以下が考えられます。
- 顧客・消費者:エンドユーザー調査(ヒヤリング、アンケート等)
- サプライヤー:パートナー調査(外部調査機関による調査等)
- 株主:IRに関する調査(外部評価機関による調査等)
- CSRに関する外部評価機関による調査
それと同時に自社の分析を行うことも必要です。マーケットにおける自社の立ち位置を理解しなければ、パーパス経営を実施する施策も見誤ってしまうからです。自社の分析は市場分析でよく使われる3C分析、SWOT分析のほか、従業員に対しては行動特性を分析するコンピテンシー分析等が有効的です。
パーパスの明文化
ベースとなるビジョン・ミッションの策定、各種ステークホルダーへ与える影響や自社分析が終わったところでようやくパーパスの明文化を行います。前段階である各種ステークホルダーの分析結果を基に、彼らが共感してくれるような内容を定義することが浸透させる上で重要なポイントです。
社内への浸透
パーパス経営の思想や価値を組織全体に浸透させるための取り組みを行います。リーダー層がパーパス経営の信念を実践し、従業員に理解・納得してもらい、日常の業務の中に当てはめていくようにしましょう。
浸透には従業員教育やコミュニケーションの活性化などが必要となりますが、これらを全て実現できる後ほど紹介する企業アーカイブの構築が方法としてオススメです。
パーパスを日々の業務へ落とし込む
従業員への浸透がある程度進んだら、後は実践あるのみです。経営層を起点に末端の従業員にまで日々の業務でパーパスを考え方の基準としてもらい、そこから従業員が関わるパートナーや消費者、ひいては企業の商品に関わるあらゆる人々へパーパスへの理解を進めていきましょう。
『これをやったら絶対にパーパスが浸透する』というものはなく、普段当たり前に行なっている業務の一つ一つを積み重ねることがパーパスの実現に繋がることを忘れないようにしましょう。
持続的な改善
パーパス経営はそのような継続的な取り組みが求められるため、持続的に評価・改善を重視することが必要です。先述したように客観的な評価基準を設け、定期的な振り返りを通じ取り組みを最適化させていくと良いでしょう。
パーパス経営に企業アーカイブが有効な理由
企業アーカイブとは、企業や団体内で制作・公開するデジタルアーカイブのことを指します。具体的には広報資料、マニュアル、販促物、記念誌など企業に関係するあらゆる史資料をデジタル化し、データベース上にアップ、社内外向けにアーカイブとして公開する取り組みのことです。
既に企業アーカイブを公開している大企業は数多く存在しますが、ブランディングやマーケティングといった側面で構築しているケースが中心です。しかしパーパス経営の実現という目的においても、この企業アーカイブは非常に有効な手段となり得ます。なぜ有効か理由を説明しましょう。
企業の歴史と進化の記録が出来る
デジタルアーカイブは企業の歴史、成長、変革を記録する手段となります。過去の業績や取り組み、戦略の変遷をデジタル形式で保存することで、企業の進化を理解し、将来の方向性を確認するのに役立ちます。こうした記録はパーパスを浸透させる上で極めて重要となる情報です。
透明性の確保と説明責任を果たせる
パーパス経営を実現する企業は、社会やステークホルダーに対して透明性と説明責任を持つことが求められます。デジタルアーカイブには、企業の取り組みや成果、目標達成の過程が記録されており、これを共有することで、企業の行動と結果を透明に示す手助けとなります。
資料をエビデンスとした検証と評価が出来る
パーパス経営の成果を評価し、目標の達成度を示すためには、定量的なデータや証拠が必要です。デジタルアーカイブには、関連するデータやドキュメントが保管されており、これを活用して実績を評価し、パーパス経営の効果を示すことができます。
ナレッジの共有と社員教育に使える
デジタルアーカイブは、過去のプロジェクトや取り組みの情報を保持しているため、新たなプロジェクトやイニシアティブにおいて、過去の経験から学びを得るのに役立ちます。知識共有と学習のプロセスを支援し、効率的な意思決定と実行を促進します。
【参考記事】ナレッジマネジメントとは?意味、使用ツール、導入方法を解説!
社内外での円滑なコミュニケーション
デジタルアーカイブがあると、社内外でのコミュニケーションを促進することにも繋がります。従業員やステークホルダーとアーカイブを共有し資料を閲覧することで、なぜ企業がパーパスを策定しているのか、その達成に向けてこれまでどんな取り組みをしてきたのかについてシェアし、社内外の者がパーパスについて様々な意見交換や交流を深めることが可能となります。
このように企業内外の資料を収集・アーカイブ化した企業アーカイブを介することで、よりパーパス経営の実践を現場レベルで浸透させることが出来るようになります。自社の歴史や取り組み、各ステークホルダーとの取り組みをまとめた企業アーカイブは、まさにパーパス経営を実現させる上で最良のツールと言えるでしょう。
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これから求められていくパーパス経営
今回はパーパス経営について解説しました。一昔前まで、企業の社会貢献と言えばCSRや一部のソーシャルビジネスに限られたお話でしたが、現在は経営レベルで社会的意義の表明・具体的戦略の実施が求められるようになっています。また消費者や各ステークホルダーも容易に情報を手に入れられるようになったため、より厳しく企業をチェック出来るようになりました。
繰り返しますが、パーパス経営は「言いっぱなし」では決してなく、表明したパーパスを具体的にどう実現するのかが極めて重要であり、その姿勢そのものが企業内外から注視されています。企業アーカイブの構築を始め様々な戦略を遂行し、真の意味で社会に貢献する企業を目指してみてはいかがでしょうか。