知識経営を意味するナレッジマネジメントという言葉をご存知ですか?現代の日本社会において、ナレッジマネジメントは企業に必要不可欠な手法となっています。
更に言えば紙資料を電子化し、企業アーカイブとして構築することでナレッジマネジメント自体を大きく前進させることが可能です。
ここではナレッジマネジメントの概要や導入プロセス、そこに企業アーカイブを導入することで得られるメリットを中心に説明します。
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Table of Contents
ナレッジマネジメントとは?
まずはナレッジマネジメントの概要から追っていきましょう。ここではナレッジマネジメントの意味や手法についての特徴を説明します。
ナレッジマネジメントの意味
ナレッジマネジメントとは、経営手法の一つで、企業が蓄積したノウハウやスキル、顧客の情報などをすべての社員間で共有することによって企業が保有している競争力を向上させ、よりよい営業成績を上げるための手法を指します。個人が持っていた知識を集約した知識は集合知とも呼ばれ、ナレッジマネジメントが注目される要因でもあります。
組織に属している個人の数が少ない場合はナレッジマネジメントを行って情報やスキルを共有することは難しいことではありません。しかし、企業規模が大きくなることによって、社員の数も多くなり、情報共有の難易度が高くなります。すると重要な情報が共有されづらくなるため、営業の機会を損失するといった障害が発生するようになります。
例えば、以前そのままスキャンで社内報のバックナンバーを電子化させていただいた株式会社WOWOW様も、出向等で新たに参加した社員が多い中情報を全社的に共有したかった、話されていました。
そのため、いかに情報を集約して社員全体で共有するかが重要になります。
暗黙知と形式知
ナレッジマネジメントを語る上で欠かせないものが暗黙知と形式知の2つです。
暗黙知とはビジネスの現場では社員が経験を積んで身につけたカンや知識など文章や図式で明示化されていないものを指します。一方で、形式知とはマニュアルや図表などによって表現されており説明できる情報のことを指します。
ナレッジマネジメントでは、暗黙知である社員1人ひとりが身につけたスキルや知識をマニュアルなどで視覚的に残すことによって、社員全員で情報を共有し、企業全体の資産とすることが重要です。
暗黙知の形式知化を嫌がる社員
暗黙知を形式知化することは企業にとって大きな利益に繋がる重要な施策ですが、社員個人の面で考えるとメリットばかりではありません。例えば自分が長年の経験で身につけたスキルを共有化されてしまうということは、社内において自分の独自性や優位性を失ってしまうことになります。
そのため、自分の立場を守るためにナレッジマネジメントを嫌がる社員が一定数発生します。これらの社員の説得もナレッジマネジメントを成功させる上で重要になってくるでしょう。
SECIモデル
SECI(セキ)モデルは、個人の知識を組織で共有して、より高度な知識を生み出すことを目的としたフレームワークプロセスです。SECIモデルの名称由来は、このモデルを形成している4つのフェーズにつけられている名前の頭文字から取られており、各フェーズを通してSECIモデルは形成されると定義されています。
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【フェーズの定義内容】
- 共同化(Socialization):組織内の小さなグループで暗黙知を共有することによって、新しい暗黙知を作り上げる
- 表出化(Externalization):共同化によって作り出された暗黙知を小さなグループが洗い出すことで形式知化する
- 結合化(Combination):複数の小さなグループがそれぞれ洗い出した形式知を結合することによって、新しい知識を作り出す
- 内面化(Internalization):結合化によって新しく作り出された知識を組織に広めることによって、新たな暗黙知を作り出す
SECIモデルは、一橋大学の名誉教授である野中郁次郎氏と竹内弘高氏によって執筆された「The Knowledge Creating Company」で提唱されました。
昨今注目されている理由
ナレッジマネジメントは最近できた新しい技術ではなく、1990年代から日本の多くの企業が採用してきたものです。それがなぜ今改めて注目されているのでしょうか?ここではその理由について説明します。
新しいナレッジマネジメントのシステムが必要に
日本企業の多くは上から下に指示がいく、ピラミッド型経営を昔から行っています。ナレッジマネジメントは提唱された1990年代から2023年現在に至るまで日本企業の経営スタイルに非常にマッチしており、広く支持されていました。しかし、終身雇用制の崩壊をきっかけに転職を積極的に行う人も多くなったことから人材の流動性が高くなり、社員個人の知識や経験を共有して組織の資産として集約する従来のナレッジマネジメントが難しくなってきました。
そのため、従来の概念を更新する新しいナレッジマネジメントが必要になっている背景があるため、注目を集めています。
ビジネスの複雑化からデジタル化されたナレッジマネジメントが必要に
新しいナレッジマネジメントが必要とされる理由として、ビジネスが国内だけではなく、海外も視野に入れたグローバル展開やインターネットをはじめとしたIT関連のインフラが一般化したことによるスピードの激化によって複雑性を増したことが挙げられます。
ナレッジマネジメントは今の時代に合わせてアナログなものからデジタルなナレッジマネジメントツールを使ったナレッジマネジメントにアップデートされてきており、徐々に企業は新しいナレッジマネジメントの導入を開始しています。
導入するメリット
ナレッジマネジメントを導入することによって、個人の知識やスキルを企業全体で共有できることが分かりましたが、導入することによって具体的にはどのようなメリットを得られるのでしょうか?
属人化を防げる
企業によっては長期間部署変更などがなく、一つの仕事にずっと同じ担当者がついているケースが見られますが、そのような場合は業務において担当者しか知らない情報やスキルが蓄積されて属人化されている可能性が高いでしょう。
属人化されたままの状態で、万が一担当者が入院するなど業務に携われない状態になると、他の社員では対応できず仕事に穴が開いてしまう可能性があります。
ナレッジマネジメントを採用することにより、担当者しか知り得ない暗黙知を形式知にすることによって、属人化を解消することによって誰でも該当の業務を対応できるようになるため、担当者のトラブルにより仕事が回らなくなるというリスクを回避することが可能になります。
情報共有によって個人の能力強化が可能
人間には得意不得意があるため、何でもそつなくこなせる社員は少ないはずです。ナレッジマネジメントによって優れた社員のノウハウをマニュアルなどで視覚化して共有することによって、他の社員の得意不得意分野を補強することが可能になります。
ナレッジマネジメントを実践する課題、注意点
優れた施策であるナレッジマネジメントですが、実践するにあたって課題や注意点が存在します。
経営陣が率先して取り組む必要がある
ナレッジマネジメントは企業のトップにいる経営陣が率先して取り組む必要があります。特定の部署や人員に対してナレッジマネジメントを組織に浸透させるように指示したとしても、社員に対してナレッジマネジメントの重要性が十分に伝わりません。
経営陣がナレッジマネジメントのメリットや重要性をきちんと理解し、主体的に組織に対してナレッジマネジメントを浸透させる努力を行うことによってはじめて社員に重要性が伝わります。
社員の意識改革が必須
ナレッジマネジメントの導入で失敗する原因の多くは、知識やスキルがうまく共有されないことです。その背景には、社員の意識改革が十分に足りてないケースが多く存在します。
ナレッジマネジメントを行うことにより、社員間で知識やスキルを共有することによって、どのようなメリットが発生するのか、会社の利益になるなど全体的なことではなく、知識を共有することにより仕事の効率性を上げられるために残業時間を減らせるなど個人レベルまで落とし込んで説明する必要があるでしょう。
人は自分の利益になる行動は起こしたくなるものですから、いかに社員のモチベーションを上げて意識改革出来るかがポイントです。
情報を共有するための環境を整備する
経営陣が主体的にナレッジマネジメントの重要性を社員に説明して実行したとしても知識や情報が共有しにくい環境であれば、効果は見えません。極端な例ですが、オフィスのホワイトボードに優秀な社員のノウハウを記載したとしても、共有しにくいことからあまり効果は期待できないでしょう。
社内イントラネットや社内SNSなど、ナレッジマネジメントツールを使って簡単に閲覧して学習できる状態にすることが大事であり、知識を共有しやすい媒体を選ぶことが重要です。
ナレッジマネジメントの導入プロセス
ナレッジマネジメントは思い立ったときにすぐ導入できるものではありません。順序を追って社内に導入していく必要があります。ここでは具体的なナレッジマネジメントの導入プロセスについて説明します。
①課題を明確にする
ナレッジマネジメントを導入する際に最初に行うべきことが社内でどのようなことが問題になっており、課題なのかということを明確化することです。課題が見えていない状態でナレッジマネジメントを導入しようとしても失敗してしまいます。
まずは課題を全て洗い出し、目に見える状態にリストアップすることが大事です。
②可視化する方法の考案
課題を全て洗い出したら、今度は問題を解決するために情報を可視化する方法を考えます。例えば情報共有が遅いのであれば高速化するためには社内イントラネットや社内SNSの導入など方法を考案して、どのようなメリット・デメリットが発生するか、導入費用がどれくらいかかるのかといった具体的なレベルまで落とし込みます。
ナレッジマネジメントを社内に導入するために中心となる人物たちで複数考えた案のうち、どれを採用すべきなのかを検討して決定し、導入を進めましょう。
③徐々に仕組みを導入する
導入を決定した施策は一気に導入するのではなく、あくまで徐々に段階を踏んで社内へ浸透させることがポイントです。
導入した後、社員がきちんと仕組みを利用しているか、問題点はないかなどを確認しながら導入を進めていき、決定した施策をすべて現場レベルで問題なく稼働するように努めていきます。
また常に業務上の課題はないか確認してナレッジマネジメントに結び付けていくことが重要です。
ナレッジマネジメントを加速させる方法
現代のナレッジマネジメントで重要になるのがナレッジマネジメントツールです。効率よく業務とナレッジマネジメントを結びつける上でナレッジマネジメントツールは都合が良く、最適な存在といえます。
ここではナレッジマネジメントで使われることが多い主なナレッジマネジメントツールについて説明します。
オンラインストレージ
オンラインストレージはDropboxやGoogle Drive、OneDriveなどWeb上でドキュメントや画像などのデータを保存することができて、チームメンバーと共有可能なツールです。
オンラインストレージを導入することによってチームで共同作業を行っている場合、ドキュメントの共有が簡単かつ高速に行えるようになるため、共有に充てる労力の軽減、速度の向上が期待できます。
社内イントラネット・社内ポータルサイト
社内イントラネットや社内ポータルサイトを導入して活用することによって、社員に対しての情報周知や業務に関するマニュアル、旅費精算書等の申請フォーマットといった別々に管理されがちな情報を1カ所に集約してわかりやすく管理運用することで業務効率を向上させることが可能になります。
社内SNS
チャットワーク、Slackなどのコミュニケーションツールを導入することによって、社内でメールを送り合うより高速かつ気軽にコミュニケーションを取ることが可能になります。
多くのコミュニケーションツールは個人単位の連絡のみではなく簡単にグループを作成することができるため、プロジェクト内のメンバーにだけ情報を共有したり、部署間を超えて情報やコミュニケーションが行えます。
社内SNSを導入することによって情報の高速化や社員同士のつながりを高めることが可能です。
企業アーカイブの構築で加速する
企業アーカイブとは、企業内外の資料をデジタルアーカイブとして整理・デジタル化し、アーカイブシステムとして公開することを指します。ここでのアーカイブは必ずしも全世界に公開するものとは限らず、特にナレッジマネジメントに寄与する企業アーカイブは社内や関係者にのみ開示されるのが通常です。
『会社でデジタルアーカイブを作ることがナレッジマネジメントに繋がる』と言われてもイメージが難しいかも知れませんが、どのようなメリットがあるのでしょうか。
ナレッジの保存と共有
企業アーカイブの対象となるのは、過去のプロジェクト資料や発刊物、PR資料など多岐に渡ります。これらは将来的に参照したり、社内外へ共有する為に重要なリソースとなります。
企業アーカイブを作れば、従業員が会社の過去事例から学び、今後同じような課題に直面した場合のベストプラクティスを特定する為に大いに役立つでしょう。
情報のアクセス性・透明性の向上
アーカイブ化されたナレッジは、必要な時、必要な人がアクセス出来るようになります。また情報の透明性が向上し、ビジネスにおける意思決定や問題の解決がスムーズに行われることが期待出来ます。
新人教育に活用出来る
企業アーカイブは、社外では決して実現出来ない、会社のナレッジの宝庫です。新入社員が過去のプロジェクトや会社の情報を参照することで組織の文化やコーポレートアイデンティを深く理解することが出来、トレーニングに一役買うでしょう。
文化と歴史の維持
博物館や自治体のデジタルアーカイブは、その分野や地域の文化・歴史を維持継承する役割があります。同じように民間企業のアーカイブでも、従業員に会社の文化と歴史を伝え、その価値観を理解させる為に大変有効です。
会社の伝統を伝えることで、従業員の仕事へのモチベーションやエンゲージメントの改善が見込めるでしょう。
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ナレッジマネジメント
ナレッジマネジメントで重要なのは、暗黙知を形式知に変換していくことです。社員1人ひとりが持っているスキルや知識をマニュアルなどで可視化することによって、企業に大きな利益をもたらす重要な資産として活用することが可能になります。
現代のナレッジマネジメントには、デジタル化されたナレッジマネジメントツールの導入が欠かせません。自社が抱えている課題や問題点を洗い出して、社内イントラネットや社内SNSなど、どのナレッジマネジメントツールを導入するとより効果的かを検討し、徐々に社内に浸透させていくことが重要になります。
また、知識が資料で蓄積されている場合は、デジタル化やアーカイブの構築によって一元管理することが可能になるため、誰でもアクセスすることが容易になり、より会社の資産としての質が上がります。会社の今後を左右することになる経営判断にも紙媒体ではなくデジタルデータを使うことで、少ない労力で経営判断を下すことが可能になります。企業内でアーカイブシステムを構築することも、ナレッジマネジメントを促進する上では有効な手段と言えます。
ただし、ナレッジマネジメントに『このやり方が絶対正しい』ということはありません。様々なツール、ノウハウを使うのも重要ですが、まずは自社にどのような課題があるのか、どんなナレッジマネジメントを目指せば良いのかを把握するところから始めると良いでしょう。